「のれん」の会計処理
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
2月1日のプロ野球キャンプインが間近に迫ってきました。
1月に入ってから新人合同自主トレなどが日々話題にはなっていましたが、やはりキャンプが始まるとなると、俄然野球熱が高まりますよね。
まずは各球団とも新人や期待の若手選手たちが怪我なく2月1日を迎えてくれることが第一かと思いますが、すでに心配なニュースもちらほら入ってきています。
特に昨年のドラフトで4球団競合となった高卒ルーキー、中日・根尾選手の右ふくらはぎ肉離れによる出遅れは中日ファンのみならず、気掛かりな方も少なくないと思います。
ただ今年はまだ始まったばかりですし、根尾選手には焦らずしっかり治すことに専念して万全の状態で戻ってきて欲しいですね!
さてRIZAPが行っていたと報道されている会計処理の中から「のれん」についてのお話をしております。
前回は「のれん」とは何か、どのようなケースで登場するのか、そしてその「のれん」を貸借対照表に計上するまでを解説しました。
今回はその後の「のれん」の会計処理についてお話してまいりたいと思います。
まず「のれん」の定義をもう一度見てみましょう。
「のれんとは、企業や事業の取得をした場合において、取得した企業や事業の取得原価が、取得した資産及び負債に配分された純額との間に差額が生じる場合があり、この差額をのれんという。
のれんは無形固定資産に計上され、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。(以下省略)」
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/contents_index.php?cid=4#anc_4_57
(『「経理・財務」用語事典』(税務経理協会))
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/
前回「のれん」は貸借対照表の「資産の部」に計上するとご説明しましたが、より厳密にいいますと、上記定義の通り「無形固定資産」に計上されます。
「無形固定資産」の会計処理については、この連載でも以下の「資産と費用」シリーズの中で解説しておりました。
資産と費用(47)https://www.jusnet.co.jp/kusuri/022/1620.php
資産と費用(48)https://www.jusnet.co.jp/kusuri/022/1622.php
資産と費用(49)https://www.jusnet.co.jp/kusuri/022/1626.php
こちらの連載にもあります通り、貸借対照表に計上された「無形固定資産」は以下のように減価償却することとなっています。
(ただし「借地権」については減価償却を行いません)
(1)減価償却の方法は「定額法」のみ(「鉱業権」を除く)
(2)残存価額は必ず「ゼロ」として計算(備忘価額も残さない)
(3)記帳方法は「直接法」のみ
「のれん」の減価償却につきましても、基本的にこの3点に沿った方法で行われます。
また償却期間については上記の定義の中にあるように「20年以内のその効果の及ぶ期間」と定められています。
前回「のれん」を「5億円」計上する例をあげましたが、仮にそちらを20年で償却するとした場合、毎期以下の処理をすることになります。
のれん償却額 25,000,000 / のれん 25,000,000
※500,000,000円 ÷ 20年 = 25,000,000円/年
借方の「のれん償却額」は「減価償却費」と同じく費用(販売費及び一般管理費)に計上されます。
そして上記の通り「のれん」自体は直接法により毎期貸借対照表からマイナスされて20年後にはゼロになる、という流れです。
ただ、この「のれん」を規則的に償却する会計処理ですが、実は他の主要国では認められていない方法となっています。
国際的な会計基準であり、多くの国で用いられている「IFRS」、そして世界一の大国アメリカで使用されている「米国会計基準(US-GAAP)」、そのいずれにおいても「のれん」の償却は行われません。
これらの基準では「のれん」の価値が大きく下がったと判断された時点で、初めて「減損」という処理を行い、「のれん」の帳簿価額を切り下げると同時に損失を計上します。
前回「のれん」とは「企業の持っている目には見えないブランド価値」であるとお話しましたが、そのような「ブランド価値」は時間の経過と共に減るような性質のものではない、というのがこの償却を行わない考え方の基礎となります。
確かにその考えには一理あると私も思いますが、規則的に償却を行わないが故の問題というものもあったりします。
前述しました通り「IFRS」や「US-GAAP」では「のれん」が大幅に価値を下げた場合に「減損」を行うのですが、特に大きな企業のM&Aであるほど巨額の損失が一度に計上されてしまいます。
近年日本もそうですが、世界的に大型のM&Aが多くなっており、それとともに非常に大きな金額の「のれん」の「減損」が行われるケースも増えています。
本業が順調な企業であってもM&Aの失敗によって突然大きな損失を計上することもあり、それが経済に及ぼす影響も決して小さくありません。
そこで日本の会計基準のように「のれん」を規則的に償却していく処理が良いのではないか、という議論も昨今アメリカなどで出てきているようです。
今後日本国内でも「IFRS」を採用する企業は増えていく見込みですが、「のれん」の処理が世界的にどのような方向性となるのか注目されています。
さて今回までで通常の「のれん」については一通り解説しましたので、次回はいよいよ「負ののれん」についてのお話をしてまいりたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えて自主トレだ!!
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