法人化の後悔とは?失敗しないためのポイントと気にすべきこと


はじめに
個人事業主として順調にビジネスを進めていると、「そろそろ法人化すべきか」と考える方も多いでしょう。
法人化には多くのメリットがありますが、実際に法人化した後に「思っていたより大変」「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。
本記事では、法人化後に後悔する理由や注意すべきポイントについて解説します。
これから法人化を考えている方や、すでに法人化したものの不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
法人化のメリットと期待されること
法人化を検討する際、多くの人が期待するメリットには以下のようなものがあります。
- ① 節税ができる
- ② 社会的信用が向上する
- ③ 融資を受けやすくなる
- ④ 事業の継続性が高まる
- ⑤ 役員報酬の設定ができる
法人化後に後悔する主な理由
法人化にはメリットもありますが、実際に法人化した後に後悔するケースも少なくありません。主に、下記の理由となります。
- ① 会社のお金=自分のお金ではなくなった
- ② 手続きや維持費の負担が想像以上だった
- ③ 社会保険料の負担が増えた
- ④ 会計・税務処理が複雑になり事務作業が増えて本業に集中できなくなった
「会社のお金=自分のお金ではなくなった」について
ここでは上記、法人化後に後悔するよくある事項「① 会社のお金=自分のお金ではなくなった」に焦点をあてて検討していきます。
(1)個人事業主が法人化すると別の法的存在になる
法人化に伴い、会社の資金と個人の資金を明確に区別する必要が生じます。
個人事業主として事業を営んでいた際には、事業の利益を自由に個人の用途に使用することが可能でしたが、法人化後は会社の資金を個人的に利用することは制限されます。
これは、法人が個人事業主とは別の法的存在となるためです。
法人化後、事業主は会社から役員報酬という形で給与を受け取ります。この役員報酬は会社の経費として計上され、法人税上の費用として認められます。
(2)役員報酬の設定を低めにすると?
役員報酬の設定にあたり会社の利益をどの程度内部留保するかが重要な検討事項です。
例えば将来的に上場を目指しているのであれば役員報酬を低めに設定し利益を社内に留保し、自己資本を充実させることが求められます。
さらに、銀行からの融資を検討している場合、会社の財務状況や資産価値が審査に影響を与えます。健全な財務体質を維持し、役員報酬を低めに設定し一定の内部留保を確保することで、金融機関からの信用度が向上し、融資を受けやすくなります。
ただし役員報酬を低く設定しすぎると、個人の手取りが減少し、医療費などの急な出費に対応できなくなるリスクがあります。さらに将来的に受け取る年金額が少なくなる可能性もあります。
(3)事業承継を視野に入れる場合は?
逆に事業承継を視野に入れている場合、会社の評価額が高いと相続税や贈与税の負担が増加する可能性があります。
このような場合、役員報酬を適切に設定し、会社の利益を個人に分配することで、会社の資産価値を下げることも一つの方法です。これは、将来的発生する事業承継に伴う税負担を軽減する戦略となります。
ただし、役員報酬を過度に高額に設定すると、税務上の問題が生じる可能性があります。役員報酬が業務内容や会社の業績に見合ったものであるかどうかを確認され不相当に高額と判断された場合、法人税の課税対象となるリスクがあります。
まとめ
法人化には節税効果や社会的信用の向上、資金調達の容易さなど多くのメリットもありますが、コスト増、会計・税務処理の複雑化等デメリットも存在します。
法人化後は会社と個人の資金を明確に区分し、役員報酬の設定や利益の留保方針を慎重に検討することが求められます。
事業の将来像や資金計画、税務上の影響などを総合的に考慮しシミュレーションしながら慎重に判断することが必要です。