法人化に関するコラム

法人化のメリット・デメリットとは?個人事業主が知るべき重要ポイントを徹底解説

法人化のメリット・デメリットとは?個人事業主が知るべき重要ポイントを徹底解説
税理士_山中宏
税理士山中 宏

個人事業主として事業を営んでいると、「法人化すべきか?」と悩む場面に直面することがあるでしょう。法人化には、節税や信用力の向上など多くのメリットがある一方で、設立費用や税務の負担増といったデメリットも存在します。

「法人化した方が得なのか?」「どんなデメリットがあるのか?」

このような疑問を持つ個人事業主の方に向けて、本記事では「法人化 メリット デメリット」というキーワードに基づき、法人化のメリット・デメリットを網羅的に解説します。

さらに、法人化すべきかの判断基準や、手続きの流れ、法人化後の成功ポイントについても詳しく紹介していきます。

「今は個人事業主だけど、将来的に法人化を考えている」という方は必見です!

法人化とは?個人事業主との違い

(1)法人化とは?

法人化とは、個人事業を「法人」として登記し、法人格を取得することを指します。法人化すると、事業主個人とは別の法人格が与えられ、法的に独立した存在になります。

法人化には主に「株式会社」「合同会社」「一般社団法人」などの形態がありますが、中でも株式会社と合同会社が一般的です。

法人化のメリット

法人化のメリットとしては、税制上有利になるケースが多い、決算月を任意で決定できる、社会的な信用が高まる、経費として計上できる範囲が広がる、優秀な人材を確保しやすくなる等が挙げられます。

ここでは、「税制上有利になるケースが多い」に焦点をあててお話しします。

(1)節税の可能性が広がる

個人事業主の場合、所得が増えると税率も高くなる「累進課税制度」が適用されます。一方、法人税は一定の税率で計算されるため、一定以上の所得がある場合、法人化することで税負担を軽減できる可能性があります。

特に資本金額を1億円以下に設定すると法人税率が下がったり、中小企業経営強化税制の適用で税額控除を受けたりすることができますので、節税対策につながります。

例えば法人税率は資本金1億円以下で課税所得が800万円以下の部分に対しては15%、800万円超の部分は23.4%がかかります。
資本金が1億円超の企業の場合、課税所得額にかかわらず23.4%となります。

さらに法人化することで、以下のような節税対策が可能になります。

  • 役員報酬(自身への給与)を損金として扱える
  • 役員への退職金を損金として扱える
  • 赤字(欠損金)を10年繰越できる(個人事業主は最大3年)
  • 消費税の納税義務が最大2年間免除される。(インボイス登録してない場合)
  • 従業員決算賞与を支給しそれが損金として扱える。
  • 中小企業は留保金課税が適用されないため、利益を内部留保することで個人所得税の負担を軽減できる。
  • 共済制度を活用する

法人化のデメリット

(1)設立費用・維持コストがかかる

法人を設立するためには、一定のコストが発生します。株式会社の場合登録免除税、定款用収入印紙代、謄本手数料、定款認証費用等で合計20万円程度発生します。

さらに決算、申告書作成が個人事業主に比較して大変であり、法人化のメリットである節税の恩恵を受けるためにも税理士と契約した方が良い場合もあり税理士費用が毎月発生するようになります。

さらに社会保険に加入する必要もあり会社負担の社会保険料も発生します。

(2)法人化の手続きが煩雑

法人化には、以下の手続きが必要です。

  • 1.会社の基本事項を決定(会社名・本店所在地・資本金・事業目的など)
  • 2.会社用の印鑑を作成
  • 3.定款を作成・認証(株式会社は公証役場で認証が必要)
  • 4.資本金の払い込みを行う
  • 5.法務局で法人登記(登記完了後、法人格が正式に成立)
  • 6.税務署・都道府県税事務所に法人設立届を提出
  • 7.社会保険・労働保険の加入手続き
  • 8.個人事業の廃業手続きを行う(個人事業主からの法人化の場合)
  • 9.個人事業の資産や負債の移行手続きを行う
  • 10.取引先への通知や契約の変更
  • 11.会社の銀行口座を開設する

まとめ

法人化には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。「年間利益が800万円以上」「取引先の信用を高めたい」「事業を拡大し従業員を雇いたい」といった場合、法人化を検討すると良いでしょう。