投資と資本の相殺消去
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
今週末からいよいよ10連休、プロ野球では平成から令和にかけて行われる連戦がペナントレース前半の山場となりそうです。
特にセ・リーグの巨人とDeNAを除く4球団については、試合中止がなければ12連戦にもなってしまう過酷な日程が組まれています。
ここまでの連戦になりますと選手たちの力はもちろんのこと、投手の起用を中心としたベンチワークがいつも以上に重要となるでしょう。
ちなみに、そんな連戦の中で平成最後の試合となりそうなのが、4月30日18時にプレイボールとなる甲子園球場での阪神-広島戦です。
かたや今季初めて指揮を執る矢野監督、かたや広島を三連覇に導いた名将・緒方監督、現役時代も幾度となく名捕手vs名打者というシーンを見せてくれた両監督の対戦となります。
日本野球の聖地ともいえる甲子園球場で行われるこの試合、平成を締めくくるのに相応しい大熱戦となることを期待しています!
さて前回は、「RIZAPグループ株式会社」の子会社である「夢展望株式会社」が行った「負ののれん」計上による債務超過の解消についてのお話をしました。
しかし、この債務超過の解消は「夢展望株式会社」の「連結決算」によるものであり、「夢展望株式会社」単体での「貸借対照表」上は債務超過のままでした(以下「有価証券報告書」PDFファイルの119ページ「貸借対照表」の「純資産合計」を参照)。
http://www.dreamv.co.jp/ja/pdf/irnews/2018/20180628_01.pdf
今回はなぜ「連結」ベースでの債務超過解消が「夢展望株式会社」単体の財務諸表では反映されていないのかについて、「連結決算」における具体的な処理をあげながら解説してまいります。
さて「連結決算」といいますと、実務で経験のない方や簿記検定などでも未学習の方は「とても難しいのではないか」という印象を持たれているかもしれません。
確かに私も「連結決算」の会計処理にはかなり難解な論点も少なくないと個人的には思っています。
ただ、全体像としては「親会社の財務諸表に子会社の財務諸表を足し合わせて、重複している部分を取り除く」という理解でおおむね間違いはありません。
この「重複している部分」には、例えば以下のようなものがあります。
・親会社が子会社に対して商品を販売 → 親会社の「売上」と子会社の「仕入」を相殺
・上記に伴う掛け代金 → 親会社の「売掛金」と子会社の「買掛金」を相殺
・親会社の子会社に対する貸し付け → 親会社の「貸付金」と子会社の「借入金」を相殺
これらの処理については、何となくイメージし易いかと思います。
そもそも「連結決算」の目的の一つには、親会社が子会社に在庫を押し付けて業績を良く見せかける、などといった行為を防ぐことがあります。
ここにあげたようないわゆる「親子間取引」を相殺することで、初めてその企業グループの正確な業績を把握することができるようになる、ということになります。
おそらくここまでであれば「連結決算って思ったほど難しくはないかも...」と感じられる方も多いのではないでしょうか。
私も最初に「連結決算」を学習した際、日商簿記2級で学んだ「本支店会計」の考え方に近いかな、と感じてこの辺りまでは割とすんなり理解することができました。
しかし、この後に学んだ論点からが「連結決算」の難しいところでした。
そして、その中で私がまず若干つまずいてしまったのが、今回のメインテーマとなる「投資と資本の相殺消去」という論点でした。
この「投資と資本の相殺消去」の概要については、以下「経理の用語集」の「資本連結」の解説をご参照下さい。
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/contents_index.php?cid=10#anc_10_21
上記リンク先の冒頭に書かれている「親会社の子会社に対する投資と子会社の資本を相殺消去すること」というのが端的な説明となります。
前半の「親会社の子会社に対する投資」というのは、買収の場合であれば「親会社が子会社を何円で買ったか」ということです。
この買収対価については、親会社の単体「貸借対照表」の「資産の部-固定資産-投資その他の資産」に「関係会社株式」という科目で表示されます。
「夢展望株式会社」が「株式会社トレセンテ」を買収したケースでは、その対価は「1円」でしたので「夢展望株式会社」では以下のような仕訳をしていると考えられます。
(実際には「アドバイザリー費用等」を含めた「19,010千円」が「関係会社株式」として計上されているようです)
関係会社株式 1円 / 現預金 1円
そして後半部分の「子会社の資本」というのは、子会社単体の「貸借対照表」の「純資産の部」の金額であり、そちらと上記の「関係会社株式」とを「相殺消去する」ことになります。
ただしこの「相殺消去」の処理は「単体決算」では行われず、「連結決算」でのみ行われます。
なお「夢展望株式会社」の「連結決算」においては、子会社である「株式会社トレセンテ」の純資産の額は「7,629千円」とされています。
http://www.dreamv.co.jp/ja/pdf/irnews/2017/20170808_02.pdf
さらに今回のケースでは「夢展望株式会社」が取得した「株式会社トレセンテ」に対する債権「561,522千円」も合わせて「投資と資本の相殺消去」の処理を行っています。
結果、以下のような仕訳が「夢展望株式会社」の「連結決算」で行われていたと考えられます(ただし正確にはこの前に「単体決算」で債権取得に伴う処理などがあるため、実際の処理は少し異なっていたと推測されます)。
純資産 7,629千円 / 関係会社株式 1円
諸負債 561,522千円 / 負ののれん発生益 569,152千円
この処理によって「連結」ベースでの財務諸表上は親会社「単体」の「貸借対照表」にあった「関係会社株式」が消去され、貸借の差額として貸方に「負ののれん発生益」が計上されます(ちなみに一般的な「投資と資本の相殺消去」の処理においては「関係会社株式」の金額が「子会社の資本」を上回るため、差額として借方に「のれん」が計上されます)。
このように「負ののれん」はあくまで「連結決算」における会計処理においてのみ登場するため、「夢展望株式会社」のケースでもその「単体」の財務諸表では「負ののれん」による収益は計上されず債務超過も解消されなかった、ということです。
「連結」ベースでは債務超過を解消した「夢展望株式会社」ですが、次は「単体」ベースでも債務超過を解消できないか、と考えたようです。
そして試みられたのが、上記「負ののれん」の計上において使われた「株式会社トレセンテ」に対する債権を「単体決算」においても活用した「債権取立益」の計上という方法でした。
次回はどのような考え方で「債権取立益」を計上しようとしていたのか、その手法を具体的に見てまいりたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えてナイターへ!!
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