「のれん」は資産、では「負ののれん」は?
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
プロ野球の春季キャンプも中盤となり、今週辺りから他チームとの練習試合も始まりました。
そして来週末からはいよいよオープン戦も始まります。
シーズン開始まではまだ1ヶ月以上ありますが、オープン戦とはいえやはり実戦となると勝敗にも一喜一憂してしまいますよね。
ちなみに昨年2018年のオープン戦の順位ですが、昨シーズン日本一となったソフトバンクが10位、セ・リーグ覇者の広島は11位でしたので、シーズンの結果にはあまり関係はなさそうです。
ただ12位であった阪神は17年ぶりのセ・リーグ最下位に沈んでしまいましたので、何だかんだオープン戦でも結果が気になってしまうものですよね...
さて、本コラムでは、RIZAPが行っていたと報道されている会計処理の中から「のれん」についてのお話をしております。
前々回そして前回と「のれん」とは何か、そしてどのような会計処理を行うのか、といった視点で解説してまいりました。
今回はそちらも踏まえまして、実際にRIZAPの業績に大きく影響していた「負ののれん」についてのお話をしたいと思います。
では「負ののれん」とはどういったものなのか、その定義を見てみましょう。
「基本的には、子会社となる会社の資本を下回る金額で投資が行われた場合に発生する。
すなわち、会計上の時価よりも割安で持分を取得できたというケースである。
通常の経済活動では想定しにくい取引。
負ののれんが生じた場合は、原則として、特別利益として発生事業年度の利益として処理する。」
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/search.php?kana=ふ#anc_10_34
(『「経理・財務」用語事典』(税務経理協会))
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/
加えまして「負ののれん」が発生するケースの具体例をあげます。
【例】P社はS社の株式を全て取得し、完全子会社とした。(これまでP社はS社の株式を保有していなかった)
・買収対価 :10億円
・S社の資産(時価):50億円
・S社の負債(時価):35億円
上記は前々回「『のれん』とは?」のコラムで使用した例とほぼ同じなのですが、買収対価だけが異なっています。
前々回の例では、買収対価が「20億円」でしたので、S社の「資産」と「負債」との「時価」の差額「50億円-35億円=15億円」を「5億円」超える金額で買収していました。
そして、その超過した「5億円」が貸借対照表には表れないS社のブランド価値であり、その金額を「のれん」として「資産」に計上する、とご説明をしました。
それに対して今回の例では買収対価が「10億円」、S社の「資産」と「負債」との「時価」の差額「50億円-35億円=15億円」を逆に「5億円」下回った金額での買収となっています。
つまり平たく言ってしまうと、貸借対照表上のS社の価値よりも「5億円安く」買収ができたということです。
そしてその割り引かれた(?)金額とも言える「5億円」が「負ののれん」として計上されることになります。
ところで「のれん」は「資産」でしたので、その逆の科目である「負ののれん」は「負債」だと考えられる方も多いかと思います。
しかし「負ののれん」の定義の中にもあったように、実は「特別利益として発生事業年度の利益として処理」してしまいます。
なぜ「負ののれん」が「負債」ではなく「特別利益」なのか、私も最初に勉強した際はかなり違和感がありました。
ただ「負債」の定義を思い出してみますと、それは「『資産』を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物」というものでした。
(「負債」の定義につきましては以下のコラムで以前お話しておりましたので、ご参照下さい。
https://www.jusnet.co.jp/kusuri/022/1694.php)
「負ののれん」はあくまでM&Aを割安にできた金額であり、以後何かを放棄したり支払ったりする性質ものではありませんので「負債」ではないということは理解できます。
「負債」ではないすると「負ののれん」は貸方に発生する科目ですので、選択肢は「純資産」か「収益」のいずれかということになりますが、現在我が国の会計基準では「収益」に計上することが定められています。
そして「負ののれん」はM&Aでのみ発生しますので、会社の本業ではなく、また経常的に発生するものであるとも言えないため「収益」の中でも「特別利益」とされます。
確かに「安く買えた分が儲かった」と考えるのであれば、「収益」であるというのも頷けます。
ただこれは完全に私の個人的な感覚なのですが、それでもやはり全額を発生した事業年度の「収益」にしてしまうというのはどうにもしっくりきません。
私は会計学の専門家ではないので大した根拠のない考えではありますが、「純資産直入」して、「評価・換算差額等」などに表示する方が良いのではないかな、と思ったりもします。
今回は「負ののれん」の概要について解説しました。
「負ののれん」は一般的にはもちろん、簿記を勉強している人たちにとってもあまり馴染みのない勘定科目です。
それもそのはず、定義の中にあったように「通常の経済活動では想定しにくい取引」であるためです。
次回は「負ののれん」がなぜ「通常の経済活動では想定しにくい」のか、そしてRIZAPの業績に「負ののれん」がどのように影響を及ぼしていたのか、それらについてお話してまいりたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えて自主トレだ!!
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