税務調査官の会話テクニックがスゴイ!
お疲れ様です。ヨシオです。
今年も残り2ヶ月となりましたが、来年の税理士試験を受験予定の皆さんは順調に勉強を進められていますでしょうか?
うかうかしているとあっという間に年が明け、いつの間にか桜が咲いて直前期に突入、というのがヨシオが税理士試験に挑戦してからの感覚です。
もちろん税理士試験で最も大事なのは直前期の勉強ですが、ヨシオはあくまで基礎があっての直前期だと思っています。
特に来年初めて税理士試験を受験される方であれば、まずは年内にしっかりと自分の学習スタイルを確立していくことが重要です。
そしていったん勉強を習慣化することさえできれば、直前期までは割と順調に進んでいくと思います。
ここから直前期までおよそ半年となりますが、合格に必要な知識を直実に積み重ねていきましょう!
以前、このコラムで「調査官目線でつかむセーフ?アウト?税務調査」という書籍をご紹介しました。
https://www.jusnet.co.jp/kusuri/018/1770.php
この書籍の著者は飯田真弓さんという元国税調査官の方で、税務調査において調査官がどのような点に注目しているのかなどについて述べられていました。
税務調査の対応は税理士にとって重要な仕事の1つですので、私たち税理士を目指す受験生にとっても関心の高いテーマです。
また世間一般に税金や税理士が注目を集めることはあまりありませんが、こと税務調査となると映画「マルサの女」のお陰もあって結構興味を持たれることもあります。
そんな訳で今回も税務調査についての書籍をご紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは、薄井逸走さんの著作「税務調査官の着眼力」です。
薄井さんもやはり元国税調査官で、現在はフリーの税金ジャーナリストとして活動されています。
本作に限らず税務調査を取り上げた著作は多く、30年位前から税務調査に関わる本を出されていたようです。
その中でも、今回ご紹介する「税務調査官の着眼力」は2015年発行ということで、最近の税制改正なども一部盛り込まれた内容となっています。
本作は全部で35のテーマについてそれぞれ具体的な会社の設定をした上で、主に調査官と経理部長との間の会話を中心とした形式になっています。
本の帯の部分にも「調査官vs経理部長」とあり、副題も「顧問税理士や社長にも教えてあげよう」となっているように、基本的には会社の経理部長や経理担当者向けに書かれているようです。
さて本作で取り上げられている35のテーマですが、具体的には以下のようなものがあります。
「交際費が経費で落ちる?」
「売上の調査は原始記録がなくてはダメ?」
「海外リゾートマンションは福利厚生施設になる?」
著者がまえがきで「読者の方々がこれと全く同じ内容での調査を受けることはないでしょう」と書かれているように、内容がかなり具体的であるが故に、必ずしも普遍性があるとは言えないテーマもあります。
上記の「海外リゾートマンションは~」であれば、社長や役員がほぼ個人的に使用するために海外にリゾートマンションを購入して、それを福利厚生施設として処理しているというケースなのですが、本当にそんな無理筋を通そうとする会社があるのか個人的には疑問に感じてしまいました。
もちろん実際に同じような例があったので著者もこのような内容を書かれているのでしょうが、結構驚きでした。
ただ、ヨシオが実務で見たことのあるようなケースを取り扱っていることも少なくありません。
例えば「社内外注費って?」というテーマについては、ヨシオも実際に複数の会社で同じようなことを行っているのを見たことがあります。
簡単に内容をご紹介しますと、ほぼ社員と同じ待遇であるにも関わらず外注として扱い、源泉徴収をしていなかったり社会保険にも加入していない、というようなケースです。
かなりグレーな処理だと個人的には思っているのですが、業界によってはいまだに割と一般的だったりします。
会社にとっては事務の手間と社会保険料の負担を軽減できますし、本人にとっても目先の手取りが増えるというメリットがあり、お互いにとって都合が良いためこのようなことが行われているようです。
しかし、本作でも書かれているように税務調査ではおそらくこの点は指摘されるでしょうし、実際にヨシオも源泉徴収するよう指導され、是正した会社を見ています。
それからこれは余談となりますが、そのヨシオが知っているケースでは社会保険の未加入については特に指導されませんでした。
恐らく税務調査の管轄外であるためだったのでしょうが、今後マイナンバーの運用が進んでいきますと社会保険の未加入についてもメスが入っていくものと考えられます。
そして本作の中でヨシオにとって最も興味深かったのが、調査官の会話のテクニックを紹介しているところです。
これは何度も書かれているのですが、調査官が会社に資料の提出を求める場合「○○はありますか?」とは尋ねず、「○○はありますよね、それを出して下さい」と言うそうです。
「○○はありますか?」と訊いてしまうと相手は「ありません」と答え易いためだからだそうで、これには個人的に感心してしまいました。
このテクニックは色々な機会で使えそうなので、これからどんどん悪用、いいえ「活用」していきたいと思います(笑)。
その他にも社長のプライベートの話から少しずつ誘導尋問していく展開など、勉強になるだけでなく普通に読み物としても面白かったです。
今回は書籍「税務調査官の着眼力」をご紹介しました。
本作の全体を通して特に印象的だったのは、著者が調査官と会社のどちらの立場にも偏ることなく客観的な視点で書かれているということです。
会社が無理を通そうとするケースもあれば、調査官が乱暴な判断をする例も挙げており、税法上そして社会通念上、どちらが正しいのかがきちんと述べられています。
一つひとつのテーマは数ページであり、全体的にとても読み易い文章の書籍でもありますので、是非お買い求めの上お読みになってみてはいかかでしょうか。
という訳で、今回はここまで。
次回もお楽しみに~
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