佃製作所は創業から半世紀も...?
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
今シーズンのプロ野球は各チーム残り20試合ほどになりペナントレースも終盤戦を迎えている中、先週驚くべきニュースがありました。
阪神の鳥谷敬選手が球団社長から「ユニホームを脱いでください」との引退勧告を受けていたというのです。
確かに昨シーズンから成績の落ち込んでいる鳥谷選手ですが、2004年の入団以降長く中心選手としてタイガースを牽引してきたまさにチームのレジェンドともいえる選手です。
さらに一昨年には2000本安打を達成、また昨年NPB歴代2位の公式戦1939試合連続出場を記録するなど、鳥谷選手は21世紀のプロ野球を代表する選手の一人であるとも思います。
そんなプロ野球史に名を刻むほどの選手に対して事実上の戦力外通告ということで、このような球団の方針には阪神ファンならずとも納得がいかないでしょう。
このコラムを書いている時点の報道では「引退か、他チームで現役を続行するかの二択」とのことですが、どんな形であれ鳥谷選手とって後悔のない選択をしてもらいたいですね。
さて「『下町ロケット』の佃製作所は本当に『吹けば飛ぶような中小企業』なのか?」をテーマにお話しております。
前回は「下町ロケット」シリーズに登場する大企業・帝国重工のモデルと思われる三菱重工の「2018年度有価証券報告書」のデータとの比較を行いました。
三菱重工と比べて佃製作所は売上や利益の規模は圧倒的に小さいものの、収益性の観点からは決して劣っていない、という結論になりました。
今回はこの佃製作所の強みである収益性について、もう少し見てみたいと思います。
小説「下町ロケット」の第1作の中で、佃製作所の経理部長である殿村はこのように言っています。
「ウチがいつ創業して、いままでどれだけの利益を上げてきたか。自己資本がいかに分厚くて安全性が高いか。疑う余地はありません」
そして同じ小説「下町ロケット」の第1作の中には、殿村の部下である経理部係長・迫田の以下のようなセリフもあります。
「佃製作所の歴史で、赤字に転落したことは一度しかありません。それは先代が経営していた頃で、オイルショックの最中、機械の需要が落ち込んだときでした。
つまり、それ以外の会計年度において、弊社は、きちんと利益を出してきました」
ちなみに佃製作所の創業がいつなのかについて小説の中にははっきりと書かれていませんが、TBS版ドラマでは「昭和39年創業」という設定になっています。
(下記「下町ロケット辞典」のページの「佃製作所」という項目にあります)
https://www.tbs.co.jp/shitamachi_rocket/dictionary/04.html#jiten
また「下町ロケット」シリーズ開始時点の時代設定ですが、小説の連載が始まった2008年頃のようです。
昭和39年=西暦1964年ですので、シリーズ冒頭の時点で佃製作所は創業45年ほどの企業となります。
そしてその後シリーズの中で数年は経過していますので、劇中の佃製作所は50周年を迎えるまでにはなっているでしょう。
佃製作所はシリーズ中何度もピンチに陥っていますが、赤字になったという描写はありませんので、50年の歴史で赤字がたったの1年だけということになりそうです。
(小説第1作で営業赤字にはなっていますが、その年には50億円超もの損害賠償金を得ているので、最終損益はかなりの黒字であったと考えられます)
ちなみにその1度だけの赤字となったオイルショックの時期については、おそらく日本経済への影響が甚大であった第1次オイルショック、戦後初のマイナス成長となった1974年頃ではないかと推察されます。
となりますと、佃製作所は創業10年目頃に赤字になって以降、およそ40年間ずっと黒字であったということです。
例えば前回佃製作所と比較した三菱重工の場合、1999年以降の主要な財務データがホームページで公開されています。
https://www.mhi.com/jp/finance/finance/data/main.xls
(こちらはエクセルファイルとなります)
「主要財務データ」シートの「税引前損益」の金額を見てみますと2001年度以降は黒字が続いていますが、その前の1999年度と2000年度は連続赤字、特に1999年度は2千億円もの大きなマイナスとなっています。
もちろん前回も触れたように、この点だけを取り上げて佃製作所の収益性が三菱重工より優れていると単純に言うことはできません。
ただ、どんなに盤石なように見える大企業であっても何十年も黒字を続けるのはかなり難しいことである、という点はお分かりいただけるかと思います。
日本経済は第1次オイルショックの後も、第2次オイルショック、プラザ合意による急速な円高、バブル崩壊、アジア金融危機、ITバブル崩壊、そしてリーマンショックと何度も不況を経験してきました。
そのような不況だけでなくグローバル化によって経済の構造も変化していく中、半世紀もの間利益を出し続けるためには私たちの想像以上の企業努力が実際には必要となるでしょう。
事業会社に勤める一経理マンである私から見ても佃製作所のように黒字を続けるのがいかに難しいことなのか、自分の会社の業績をまとめていく中で日々実感しています。
前述した小説「下町ロケット」の第1作で殿村経理部長は元銀行員の視点から以下のように言っていますが、個人的には決して佃製作所を褒め過ぎているという訳ではないと思います。
「私は銀行員としていままで数千もの会社を見てきました。その目から見ても、佃製作所は立派な会社なんです」
さて、今回までは中小企業の範囲の中での佃製作所のレベル、続いて国内トップレベルの企業と佃製作所との比較、という観点で分析してまいりました。
言わば我が国の企業の両極端から佃製作所を見てきた訳ですが、次回はもう少し佃製作所と規模の近い企業のデータを用いて比較してみたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えてナイターへ!!
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