借金が利益に化ける?
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
大リーグ・エンゼルスの大谷選手がついに実戦復帰しましたね!
昨シーズン終了後に受けたトミー・ジョン手術から半年余り、まずは打者一本で今シーズンに臨むことになっています。
二刀流が代名詞である大谷選手ですが、昨シーズン22本塁打を放っており、打者に専念する今シーズンはそれ以上の結果を期待してしまいます。
ちなみに今シーズンは残り130試合を切ってしまいましたが、昨年打者としては114試合の出場に止まっていましたので、まだ昨シーズンを超える数の打席に立つチャンスがあります。
手術明けということでもちろん無理だけはしてもらいたくありませんが、また大谷選手の豪快なホームランを見られるのが楽しみですね!
さて前回は「RIZAPグループ株式会社」の子会社である「夢展望株式会社」が行った「負ののれん」計上による「連結」ベースでの債務超過解消が、なぜ「単体決算」に反映されていないのかについて解説しました。
それは「のれん」や「負ののれん」の計上という会計処理がそもそも「連結決算」でしか行われないためでした。
よって「負ののれん」による5億6千万円ほどの収益計上は「夢展望株式会社」の「単体決算」による財務諸表には影響がなく、「単体」ベースでは債務超過のままとなっていました。
そこで「夢展望株式会社」ではこの「単体」ベースの債務超過を解消するため、再び「株式会社トレセンテ」に対する債権を利用した会計処理を行おうとしました。
その具体的な手法は以下のようになります。
以前よりお話している通り「夢展望株式会社」は「株式会社トレセンテ」を「株式会社ニッセンホールディングス」から買収しました。
「株式会社トレセンテの株式の取得(子会社化)及び新たな事業の開始に関するお知らせ 」
http://www.dreamv.co.jp/ja/pdf/irnews/2017/20170428_01.pdf
それからしばらく後、今度は「株式会社ニッセンホールディングス」の保有する「株式会社トレセンテ」に対する貸付債権を「夢展望株式会社」が買い取っていた、ということが公表されます。
「子会社に対する債権取得及びそれに伴うその他の収益の発生(連結)に関するお知らせ」
http://www.dreamv.co.jp/ja/pdf/irnews/2017/20170516_04.pdf
この債権の額面は「561,522千円」すなわち5億6千万円余りですが、それをわずか「1円」で買い取っています。
つまり「株式会社ニッセンホールディングス」は約5億6千万円を「株式会社トレセンテ」に貸していましたが、全く回収できないと考えて「夢展望株式会社」に実質タダで引き取ってもらった、ということでしょう。
おそらくこの債権の取引については「株式会社トレセンテ」のM&Aの交渉過程で取り決められていたのだと思います。
(上記のお知らせに書かれているように、株式取得と同日にこの貸付債権の取得も行われているため)
そしてこの際に「夢展望株式会社」が行った仕訳は以下のようなものであったと考えられます。
貸付金 1 / 現預金 1
基本的に会計計上は買った時の金額で行いますので、この債権の帳簿価額は上記仕訳の通り「1円」となります。
さてここからが今回の問題のポイントとなります。
回収不能かと思われていたこの債権、何と5億6千万円の内4億円余りが返済されたのです。
「特別利益の発生に関するお知らせ」
http://www.dreamv.co.jp/ja/pdf/irnews/2018/20180330_06.pdf
回収できないと思われてわずか「1円」で取得していた債権が、4億1千9百万円になってしまいました。
この時「夢展望株式会社」では以下のような仕訳をしようと考えられていました。
現預金 419,000,000 / 債権取立益 419,000,000
お金が返ってきて利益も計上できた、「夢展望株式会社」にとっては超ラッキーな出来事のように見えます。
しかし実際にはこの取引そのものが仕組まれたものでした。
そもそも「株式会社ニッセンホールディングス」が「1円」しか受け取れなくても引き取ってもらいたかったような「株式会社トレセンテ」という会社が、急に4億円ものお金を返済できてしまうというのはどう考えても不自然です。
ではなぜ返済ができたのでしょう。
実はこの4億円、「株式会社トレセンテ」が金融機関から借りたお金だったのです。
もちろん金融機関から借入れをすること自体は普通のことですし、そのお金を取引先などに対する債務の支払いに充てることも決しておかしなことではありません。
しかし子会社「株式会社トレセンテ」の借入金は、同時に親会社である「夢展望株式会社」にとっても自らが支配する企業グループ全体として保有している債務でもあります。
「夢展望」グループとしては結局金融機関に返済しなければならない借入金である訳ですから、それをそのまま使って子会社から返ってきたお金を利益に計上してしまうことは適切でない、というのが監査法人からの指摘であったようです。
そんな訳でこの会計処理は結局最終的には行われることはなく、「夢展望株式会社」の2018年3月期の「単体決算」は債務超過のままとなりました。
しかし親会社である「RIZAPグループ株式会社」の「負ののれん」計上が注目される中で、後日この「債権取立益」による利益のかさ上げ未遂についても報道されることとなってしまいました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38672900X01C18A2DTA000/
(こちらは「日経電子版」会員限定記事となっています)
さて、これまで10回ほどに渡って「RIZAP」及びそのグループ会社で行われていた、利益のかさ上げとも受け取られる会計処理について見てまいりました。
業績不振のみならずこのような会計処理を行っていたことが知られたことにより、「RIZAPグループ株式会社」の株価は急落してしまいました。
ただ「RIZAP」で行われていたのは決して、粉飾決算ではありません。
もちろんかなり強引な手法だとは思いますし、不自然な取引も多いのですが、不正をせずともこのような利益のかさ上げができてしまう、ということ自体が会計の持つ怖さなのかもしれません。
私などは会計の世界では末端にいる存在ですが、会計というものの影響力の大きさ、そしてその恐ろしさを垣間見たような気がしたニュースでした。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えてナイターへ!!
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