有価証券報告書から読み解く「負ののれん」
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
前回のコラムでも話題にしましたが、いよいよ今週末シアトル・マリナーズとオークランド・アスレチックスが来日します。
イチロー選手や菊池投手の活躍はもちろん楽しみですが、本場のメジャーリーガーたちの真剣勝負が日本で見られるという機会はやっぱり貴重ですよね。
そんな中で私が特に注目しているのが、アスレチックスのクリス・デービス選手です。
3年連続で40HR・100打点超えを達成し、昨シーズンはア・リーグ本塁打王にも輝いたメジャーリーグを代表するスラッガーということで、いやが上にも期待が高まります。
バッターボックスでの構えは外国人らしくなく(?)かなり地味なのですが、そこから物凄いスイングでホームランをかっ飛ばす姿を東京ドームでも見られることを楽しみにしています!
さて、RIZAPが行っていたと報道されている会計処理の中から「のれん」そして「負ののれん」についてのお話をしております。
前回、前々回と「負ののれん」の基本的な内容やなぜ通常は想定されない取引なのか、といったテーマで解説してまいりました。
今回は実際にRIZAPが計上していた「負ののれん」について、「有価証券報告書」の記載から見てまいりたいと思います。
CMなどでお馴染みのトレーニングジム「RIZAP」を実際に運営している会社は「RIZAP株式会社」ですが、その親会社でありその他のグループ各社を統括しているのが「RIZAPグループ株式会社」です。
この「RIZAPグループ株式会社」は「札幌証券取引所アンビシャス市場」に株式上場しています。
上場企業である「RIZAPグループ株式会社」はもちろん「有価証券報告書」を公開しており、その内容を見ることでグループ全体の経営や財務の状況を知ることができます。
ちなみに「有価証券報告書」は「EDINET」からダウンロードすることもできますし、多くの上場企業では各社HPの「IR情報」などのページに公開されています。
「RIZAPグループ株式会社」では以下のページに過去の「有価証券報告書」がアップロードされています。
https://www.rizapgroup.com/ir/library/financial-report/
今回は上記のページにある「有価証券報告書」から「2018年3月期 有価証券報告書」の内容を見てみましょう。
「負ののれん」は以前お話したように「特別利益」として「収益」に計上しますので、損益計算書上に記載されているはずです。
そこで上記「有価証券報告書」の51ページにある「連結損益計算書」を見てみますと、そもそも「特別利益」の項目が見当たりません。
といいますのも、RIZAPは国際的な会計基準である「IFRS」を採用しており、日本の会計基準では「特別利益」となる「負ののれん」がここでは「その他の収益」という項目に含まれているのです。
日本基準の「特別利益」であれば損益計算書にその内訳が明記されるので「負ののれん」が何円計上されているのかがは一目瞭然なのですが、「その他の収益」には残念ながら内訳が書かれません。
ですので、この「連結損益計算書」からはRIZAPが「負ののれん」をどれだけ計上していたのかは読み取れません。
「負ののれん」を探して「有価証券報告書」をもう少し読み進めていきますと、64ページに「6.企業結合及び非支配持分の取得」という記載があります。
実はここにようやく「負ののれん」が登場しています。
この64ページから「(1)取得による企業結合」すなわち買収した企業に関する事項が載っていますので、まず最初の「①株式会社日本文芸社」の記載を見てみましょう。
ページの下部に「のれん(割安購入益) △1,483,821」とありますが、まさにこれが「負ののれん」の計上金額となります。
ちなみに、金額の単位は「千円」ですので、この「日本文芸社」という会社の買収に際して約15億円もの「負ののれん」を計上したということがここから読み取れます。
なお、その下にある「(注)」にも「のれん:公正価値で測定された純資産が支払対価を上回ったため割安購入益が発生しており、連結損益計算書の『その他の収益』に含めて表示しております。」と書かれています。
この後、同じ「取得による企業結合」には前会計年度(2016年4月~2017年3月)分として計7社、当会計年度(2017年4月~2018年3月)分として計6社の情報が記載されています。
それによりますと前会計年度には7社中4社で合計約58億円、当会計年度については6社中5社で合計約83億円という「負ののれん」が計上されていたことがわかります。
「通常の経済活動では想定しにくい」はずの「負ののれん」がこの2年間で9社の買収で発生しており、さらにそれが買収を行った内の7割近くを占めているということは、明らかに普通ではないといえるでしょう。
また、前会計年度の営業利益が約102億円(「負ののれん」が約58億円)、当会計年度の営業利益は約136億円(「負ののれん」が約83億円)であることを考えると、「負ののれん」を使って恣意的に利益を多く見せていたと疑われても仕方ないように思われます。
このようにRIZAPは積極的に企業買収を行うことで多額の「負ののれん」を計上、それによって本業の業績不振をカバーするという手法を近年続けてきました。
しかし、やはりこの不自然なやり方は社内外から問題視されるようになり、RIZAPは新規のM&Aを原則凍結することを先日発表しました。
2019年3月期にも100億円ほどの「負ののれん」の計上を見込んでいたRIZAPでしたが、M&Aの凍結により利益を下方修正、結果として赤字になる見通しです。
ここまで5回ほどに渡って「のれん」「負ののれん」についてお話してまいりました。
私自身「のれん」については多少なりとも勉強してきたつもりでしたが、「負ののれん」に関しては簿記検定の学習でさらっと触れて以来、久しぶりに見たというのが正直な所です。
ですので、RIZAPによる「負ののれん」を使った処理を報道で知った時はちょっと意外でしたし、実際に「有価証券報告書」の記載を見てさらに驚きを感じました。
ところが、RIZAPはこの他にも利益をかさ上げするような方法を使っていた、という報道までされています。
次回はRIZAPが「負ののれん」以外で使っていたといわれている手法についてのお話をしてまいりたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えて自主トレだ!!
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