「負ののれん」はかなりレア?
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
日本だけでなく、海の向こうメジャーリーグでもオープン戦が始まりました。
そのメジャーリーグで私たち日本人にとっての今シーズン注目チームの1つには、間違いなくシアトル・マリナーズがあげられるでしょう。
今シーズンから移籍した菊池雄星投手だけでも大きな話題である上に、何と言ってもイチロー選手の現役復帰という最大級の見所があります。
スポーツニュースでもイチロー選手と菊池投手がニアミスしたというだけで取り上げられるなど、報道もかなり過熱してきているように感じます。
マリナーズの開幕戦が来月東京ドームで開催されるということもありますので、これからさらに盛り上がっていきそうですね!
さて、RIZAPが行っていたと報道されている会計処理の中から「のれん」そして「負ののれん」についてのお話をしております。
前回は実際にRIZAPの業績に大きく影響していた「負ののれん」の基本的な解説しました。
今回も引き続き「負ののれん」についてお話してまいりたいと思います。
それでは前回示しました「負ののれん」の定義をもう一度見てみましょう。
「基本的には、子会社となる会社の資本を下回る金額で投資が行われた場合に発生する。
すなわち、会計上の時価よりも割安で持分を取得できたというケースである。
通常の経済活動では想定しにくい取引。
負ののれんが生じた場合は、原則として、特別利益として発生事業年度の利益として処理する。」
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/search.php?kana=ふ#anc_10_34
(『「経理・財務」用語事典』(税務経理協会))
https://www.jusnet.co.jp/dictionary/
前回の最後にも触れたように「負ののれん」は「通常の経済活動では想定しにくい取引」であるため、恐らく多くの方にとってあまり馴染みがありません。
ではなぜ「負ののれん」は「通常の経済活動では想定しにくい」のでしょうか?
このことは「のれん」や「負ののれん」を計上する、つまり買収などを「する」側ではなく、逆の買収「される」立場の視点から考えてみるとお分かりになるかと思います。
【例】P社はS社の株式を全て取得し、完全子会社とした。(これまでP社はS社の株式を保有していなかった)
・S社の資産(時価):50億円
・S社の負債(時価):35億円
上記の例は、以前から使っているのと同じものですが、ところでこの場合において「S社」としてはいくら位で買収されたい、すなわち会社を何円で売りたいと思っているでしょうか?
資産の時価が50億円、負債の時価が35億円ということですので、仮に会社そのものを売却をしなくても全ての資産を換金し全ての負債を清算してしまえば、差額の「50億円-35億円=15億円」は手元に残ることになります。
となりますと「S社」は最低でも「15億円」、できればより高く売りたいと思うのが自然ではないでしょうか。
売る側の立場からすれば余程の事情でもない限り、無理に安く売却する必要はない訳ですから、「通常の経済活動」においては当然「15億円」以上の買収対価となります。
そして「15億円」超の金額で買収が行われた場合、その「15億円」を超えた部分の金額を買収した側が「のれん」に計上する、ということはすでにお話しているところです。
では「負ののれん」ですが、定義の中にあるように「会計上の時価よりも割安で持分を取得」、上記例で言えば「15億円」より安く買収が行われたケースで計上されます。
しかし前述の通り「S社」にとっては「15億円」未満で売却するメリットは普通ありません。
考えられるケースとしては「S社」の保有する資産の性質が価値はあっても換金することが難しい、あるいは時間がかかるものであるのに対して負債の返済はすぐにしなければならない、という状況などでしょうか。
いずれにしても、売却側が急場のお金に余程困っていて買収側に足元を見られる、というケースでもなければ「S社」が「15億円」より安く売ることは考えにくいです。
つまり買収「する」側の「P社」の立場に戻って見てみれば、「S社」を「15億円」より安く買収できるということは可能性が低く、安く買えないのであれば「負ののれん」を計上することもない、ということになります。
小売店や飲食店が客を増やすために「原価割れ」覚悟で大安売りをすることはありますが、企業を売却することはもちろんその企業の本業ではなく、しかも基本的に一回しか起こらない取引ですので集客する必要もありません。
もちろんなかなか売却先が見つからなければ値引き(?)をするかもしれませんが、会社を清算してしまった方が得、というレベルまで安くするのは合理的ではありません。
また買収「する」側としてはもちろん少しでも安く買いたいとは思うのでしょうが、そもそも「M&A」の目的は買収することそれ自体ではなく企業やグループの発展のために行われるものです。
「安くてもいいから早く売ってしまいたい」ような会社は、普通に考えれば買収先としては決して魅力的ではありませんよね。
そのように考えても「会計上の時価よりも割安」で「負ののれん」を計上するようなことはレアである、ということがご理解いただけるかと思います。
さてそんな珍しい「負ののれん」をRIZAP(正確には「RIZAPグループ株式会社」)はかなりの金額計上していました。
次回はその点について、RIZAPの「有価証券報告書」の記載を元にお話してまいりたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えて自主トレだ!!
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