「預り金」の運命やいかに?(その3)
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
今年のプロ野球も半年以上に渡る熱戦の末、ついに今週末からその頂点を決める闘いである日本シリーズが始まります。
日本シリーズで激突する2球団以外のファンにとって今シーズンは本当に残念でしたが、まだ明日12球団による大決戦が残されていますよね。
そう、皆さんお待ちかねのドラフト会議です。
今年のドラフトも昨年に引き続き夏の甲子園大会で活躍した高校球児たちに注目が集まっています。
中でも決勝で対戦した大阪桐蔭・根尾選手と金足農業・吉田投手は、共に一位で複数球団が競合することも予想されています。
毎年のようにドラマの生まれるドラフト会議、今年も大いに楽しみましょう!
前々回は給与から控除した(差し引いた)「預り金」のうち「所得税」と「住民税」を、そして前回は「健康保険料」と「厚生年金保険料」について見てまいりました。
今回は最後に残しておりました「雇用保険料」について解説したいと思います。
あらためて以前よりあげております仕訳例を以下に示します。
【例】
〈支給項目〉基本給:240,000円
〈控除項目〉健康保険料:11,880円、厚生年金保険料:21,960円、雇用保険料:720円、所得税:4,980円、住民税:9,900円
【仕訳】
給与手当 240,000 / 普通預金 190,560
/ 預り金(健康保険) 11,880
/ 預り金(厚生年金) 21,960
/ 預り金(雇用保険) 720
/ 預り金(所得税) 4,980
/ 預り金(住民税) 9,900
今回のテーマである「雇用保険料」も、これまで見てきました「所得税」「住民税」「健康保険料」「厚生年金保険料」と同じく給与から控除して会社が納付するものです。
しかしその納付について「雇用保険料」だけが異なる点があります。
「所得税」と「住民税」は「給与支給日の翌月10日」までに納付、「健康保険料」と「厚生年金保険料」の納付期限は「翌月末日」、ということで基本的にいずれも毎月納付するものでした。
それに対して「雇用保険料」の納付については、何と1年に1回しかありません。
具体的に言いますと、毎年6月1日から7月10日までの間に1年分をまとめて納付することになっています。
さらにもう1つ、「雇用保険料」の納付が他とは違っていることがあります。
例えば「2018年10月」支給の給与から控除された「所得税」「住民税」であれば「2018年11月10日」までに納付します。
(厳密に言えば「2018年11月10日」は土曜日ですので、実際には週明けの「2018年11月12日」の月曜日が納付期限となります)
また「2018年10月分」の「健康保険料」「厚生年金保険料」については、「2018年11月30日」が納付期限です。
このように「所得税」「住民税」「健康保険料」「厚生年金保険料」は全て、言わば「後払い」で納付しています。
しかし今年、日本中の会社が「2018年7月10日」までに納付した「雇用保険料」は実は「2018年4月~2019年3月」という期間の保険料なのです。
7月の時点で翌年3月までの保険料を納付するということですので、つまり「雇用保険料」は「前払い」であるということになります。
ここで「前払いなのに正しい保険料の計算が出来ているの?」という疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思います。
実はその疑問の通り「2018年7月10日」までに納付した保険料の金額は「2018年4月~2019年3月」の一年分の正確な額ではなく、あくまで概算額となっています。
ではその概算額をどのように算出するのかと言いますと、前年である「2017年4月~2018年3月」の実績値を元に計算しています。
もちろんこれは概算に過ぎませんので、一年後に「2018年4月~2019年3月」の実績値を用いて正しく算出される保険料の金額とは当然ながら差異が出てしまいます。
そしてその差異については、次の年の概算額を納付する際にそこにプラスあるいはマイナスして調整しています。
これらを計算式にしてみますと、以下のような感じになります。
「2018年7月10日」までに納付した「雇用保険料」=【「2018年4月~2019年3月」の概算額】±【『「2017年7月10日」までに納付していた「2017年4月~2018年3月」の概算額』と『「2017年4月~2018年3月」の実績額』との差額】
上記の計算式において『「2017年4月~2018年3月」の概算額 <「2017年4月~2018年3月」の実績額』であればその差額をプラス、逆であれば差額をマイナスして納付金額を算出します。
このようにして計算される「雇用保険料」ですが、その一部は給与から控除した「預り金」を充当し、残りを会社が負担して納付しています。
さらに実際には、いずれも会社のみが負担する「労働者災害補償保険(労災保険)料」と「一般拠出金」も合わせて納付することとなっています。
なお「雇用保険」と「労災保険」を総称して「労働保険」と呼び、上記のように一年間の保険料を計算して申告・納付することを「労働保険の年度更新」といいます。
さてここまで長々とご説明してまいりましたが、本来上記のような知識はどちらかと言えば人事・労務の担当者にとって必要なもので、いわゆる「経理」業務には厳密には属さないものではあります。
しかし今回なぜこのようにやや詳細に解説したのかと申しますと、これらの知識が「雇用保険料」に関わる会計処理の理解にとても役立つためです。
私自身、最初に「労働保険の年度更新」の際の会計処理を教えてもらった時は、どうしてそのような仕訳になるのかほとんど意味が分かりませんでした。
その後社会保険の担当者の方から上記のような「労働保険の年度更新」の基本的な仕組みを教えていただき、ようやくその会計処理の全体像を理解することができました。
という訳で今回のご説明を踏まえまして、次回は「雇用保険料」に関する会計処理について詳しくお話したいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えてナイターへ!!
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