資産と費用(82) ~工事損失引当金~
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
先週末ついに今年のプロ野球ペナントレースが始まりましたね!
皆さんご贔屓のチームの開幕カードはいかがだったでしょうか。
まだまだ始まったばかりとは言え、スタートダッシュに成功出来たかどうかで早くも一喜一憂してしまいますよね。
これから半年ほど贔屓のチームの勝敗にやきもきする日々が続きますが、それも含めて今シーズンも大いに楽しんでいきましょう!!
「負債」を大きなテーマに、様々な「引当金」についてお話しております。
今回も前回に引き続き、「工事損失引当金」に関連して工事契約に関する会計処理について解説いたします。
前回「工事進行基準」の基本的な計算方法をご紹介いたしました。
そしてその計算に用いる3つの要素のうち「工事原価総額」の見積りが実務上問題となることをお話いたしました。
と言う訳で今回は工事期間中に「工事原価総額」が当初の見積りをオーバーし、最終的に損失が出てしまうケースにおける処理を見てまいります。
【例】
工事期間:平成28年度~平成30年度
工事代金合計(売上):1,000億円
工事費用合計(原価): 900億円(工事開始時の見積り)
(1)平成28年度末(工事進捗度10%)
売上 ... 1,000億円×10%=100億円
原価 ... 900億円×10%= 90億円
利益 ... 100億円-90億円= 10億円
平成29年度において材料費・人件費の高騰により、工事費用合計の見積りが1,100億円となることがわかった。
(2)平成29年度末(工事進捗度60%)
売上 ... 1,000億円×60%-100億円= 500億円
原価 ... 1,100億円×60%- 90億円= 570億円
利益 ... 500億円-570億円=▲70億円
上記の通り、平成29年度は「工事原価総額」を新たな見積り金額である「1,100億円」として計上する原価を計算し、結果「70億円」の損失を計上することになります。
しかし平成29年度の処理はこれだけではありません。
そう、ここでいよいよ「工事損失引当金」が登場いたします。
この平成29年度の時点の見積りで「工事収益総額」は「1,000億円」で「工事原価総額」は「1,100億円」、すなわちこの工事は最終的に「100億円」の赤字となることが見込まれています。
「工事契約に関する会計基準」では、この「100億円」の損失をそれが判明した決算期である平成29年度に全て会計計上することが求められます。
この例ではすでに平成28年度に利益を「10億円」、そして平成29年度に損失を「70億円」計上していますが、それらの合計と最終的な損失「100億円」との差額を「工事損失引当金」として計上することになります。
工事損失引当金計上額 = 100億円 + 10億円 - 70億円 = 40億円
仕訳としては、以下のようになります。
工事原価 40億円 / 工事損失引当金 40億円
結果、平成29年度においては売上が「500億円」原価が「570億円+40億円=610億円」計上され、差額の「110億円」が損失として計上されます。
そして平成28年度に計上していた利益「10億円」と差し引きで、工事全体としての収支はトータル「100億円」の損失となる訳です。
さてそれでは最後の平成30年度の処理はどのようになるのでしょうか。
(3)平成30年度末(工事進捗度100%)
売上 ... 1,000億円-(100億円+500億円)= 400億円
原価 ... 1,100億円-( 90億円+570億円)= 440億円
利益 ... 400億円-360億円 =▲40億円
まず通常通り上記のように計算します。
この時点で「40億円」の損失が出てしまっていますが、この後平成29年度に計上していた「工事損失引当金」を消去する仕訳をします。
具体的には、以下のように計上した時の逆仕訳をします。
工事損失引当金 40億円 / 工事原価 40億円
上記仕訳により、平成30年度においては売上「400億円」原価「440億円-40億円=400億円」、結果的に収支はゼロとなります。
よって、この工事全体での収支は平成29年度までに認識していた「100億円」の損失のまま、ということになります。
少々分かりにくいかと思いますが、ポイントは「損失が発生することが判明した決算期にその損失の全額を認識する」という点です。
通常の計算では利益をそれぞれの期間に按分して計上しているに対して、「工事損失引当金」においては損失を特定の決算期にまとめて計上するという形をとります。
次回はその点の解説も含めて「工事損失引当金」のまとめのお話をいたしたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えてナイターへ!!
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