資産と費用(79) ~未認識債務~
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
プロ野球の春季キャンプも終盤に差し掛かり、今週末からはいよいよオープン戦が始まりますね。
すでに紅白戦や練習試合などは行われていましたが、オープン戦となると各チームともかなりシーズンを想定した戦い方が見えてきます。
毎年必ずしもオープン戦の結果がそのままシーズンにつながっているとは限りませんが、ファンとしては早くも一喜一憂してしまいますよね。
しかしプロ野球の試合が見られること自体久しぶりのことですので、ただ純粋に選手たちのプレーが楽しみでもあります。
開幕まで残り一ヶ月余り、オープン戦だけでなく3月頭にある侍ジャパンの強化試合にも注目ですね!
「負債」を大きなテーマに、様々な「引当金」についてお話しております。
今回も引き続き「退職給付引当金」の計算方法の概要を解説してまいりたいと思います。
前回の最後に「退職給付引当金」の計算において「未認識債務」という論点があることをお話いたしました。
「退職給付引当金」はあくまでそれを計算する時点での様々な予測に基づいて見積もられた金額が計上されています。
しかしその計算の根拠となった予測と実績との間にはほぼ必ず差異が生じてしまいます。
この差異は「退職給付引当金」に反映させることになりますが、発生した時点で全て一時に計上してしまうと会社の負担がその期だけ過大になってしまうことが考えられます。
そこで負担の平準化のため会計上この差異をいったん帳簿外で処理し、一定の期間を通じて少しずつ「退職給付引当金」に計上していくことが認められています。
そしてその差異のことを「未認識債務」といいます。
この「未認識債務」には以下の3種類があります。
・未認識数理計算上の差異
・未認識過去勤務費用
・未認識会計基準変更時差異
まず「数理計算上の差異」についてご説明いたします。
前々回・前回において「退職給付費用」の計算方法をご紹介いたしました。
そこでは触れませんでしたが、実はこの計算は期首の「年金資産」や「退職給付債務」を元に行います。
ですので例えば「期待運用収益」であれば、期首に予測した「年金資産」の運用益の金額と、実際に一年間運用した結果得られた利益の金額には差異が生まれます。
「勤務費用」や「利息費用」についても、期首の計算の根拠となった社員の退職率や昇給率、割引計算で用いた割引率などが期末の時点で変化していれば、やはり差異が発生してしまいます。
それらが「数理計算上の差異」と呼ばれるもので、その期においては貸借対照表に計上せず「未認識債務」として翌期以降複数の会計期間に渡って計上していきます。
次に「過去勤務費用」ですが、これはそのまま「勤務費用」に関わる差異です。
会社の退職金規程が改訂された場合、将来の退職金の支給見込額も当然変わってきます。
その改訂前後の差異が「過去勤務費用」と呼ばれるもので「未認識債務」として簿外処理し、それを退職金規程の改訂が行われた期から一定の年数で償却していきます。
最後は「会計基準変更時差異」となりますが、このご説明にはまず我が国の会計の歴史を少し振り返る必要があります。実は今世紀初頭まで日本では退職給付制度に係る会計基準がきちんと整備されていませんでした。
それ以前は企業年金については掛金を毎期費用計上、退職一時金については「自己都合要支給額」という金額を基準にその何割かを「退職給【与】引当金」として負債計上する、という処理が一般的でした。
(「自己都合要支給額」とは、定年・解雇などの会社都合ではなく、自己都合で退職した社員に支払われる退職金のことです)
しかし2002年から退職給付会計基準が導入されることとなり、ここまでお話してきました「退職給【付】引当金」の計上が新たに義務付けられました。
そのため以前の「退職給【与】引当金」による処理を行っていた会社では、新しい「退職給【付】引当金」による処理に切り替えた訳ですが、その時に発生した差異が「会計基準変更時差異」です。
この「会計基準変更時差異」については、政策的に「未認識債務」として15年以内の一定の年数で償却することが認められました。
連載5回分となってしまいましたが「退職給付引当金」についての解説は以上といたします。
「退職給付引当金」の計算は日商簿記1級の試験範囲ではありますが、実務上は試験問題以上に複雑な計算が必要となってきます。
そのため、企業年金の運用委託先である信託銀行や保険会社の年金数理人(アクチュアリー)が実際の計算を行うことなども多いようです。
さて次回からはまた他の「引当金」をとりあげてまいりたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えて自主トレだ!!
弊社は掲載された内容に関し、如何なる保証もするものではありません。
また、記載されている事項は変更される場合がありますので、予め御承知おき下さい。