資産と費用(75) ~退職給付引当金 概要~
どうも、野球大好き経理マンのノボルです!
メジャーリーグ挑戦が取り沙汰されていた大谷翔平選手ですが、先日ロサンゼルス・エンゼルス入りが決定しましたね!メジャー各球団との本格的な交渉開始から思いのほか早く移籍先が決まりましたが、制度上契約金や年俸の交渉が無いに等しかったためなのでしょう。
その大谷選手の年俸はメジャー最低水準の6千万円ほどになるようでさすがに低すぎるとは思いますが、かえってお金以外の条件面で純粋に球団を選択出来たことは良かったのかもしれません。
メジャーでも引き続き二刀流に挑戦するのか、それとも投手を中心にプレーするのか、いずれにしましても来年の大谷選手の活躍が今からとても楽しみです!!
「負債」を大きなテーマに、様々な「引当金」についてお話しております。
前回は「賞与引当金」をとりあげましたが、今回も社員への給与等に関連する「引当金」として「退職給付引当金」について見てまいりたいと思います。
「退職給付引当金」はいわゆる退職金制度のある会社において計上される「引当金」です。
ただ全ての退職金に対して計上される訳ではありません。少々複雑な面もある「引当金」なのですが、まずはその定義を見てみましょう。
「退職給付会計において、期末時点の退職給付債務から年金資産の時価を控除した金額(未積立退職給付債務)に
未認識項目(過去勤務債務、数理計算上の差異、会計基準変更時差異の未償却額)を加減算した場合に、
貸方残高となったものを退職給付引当金という。
退職給付の支払は長期にわたるため、貸借対照表の固定負債に計上される。
なお、借方残高となったときは、『前払年金費用』として貸借対照表の投資その他の資産に計上される。」
(会計用語辞典(日経文庫))
見慣れない用語の多い難しい説明ですが、とりあえず「退職給付引当金」は「固定負債」であることはお分かり頂けたかと思います。
もう少し理解を深めるために、冒頭に書かれている「退職給付会計」とは何ぞや、という点を次にご紹介します。
「決算日において会社に発生している従業員等に対する退職金等の支払義務と、これに関する年金資産等の積立不足の現状を明らかにして、
会社の負担する退職給付に係る費用についての適正な会計処理を行う考え方及び基準等をいう。(中略)
退職給付会計は、(1)退職一時金制度及び給付建の企業年金制度を会社が採用しており、
(2)労働の対価としての性格を持ち、(3)債務を合理的に計算できる場合に適用される。(以下省略)」(会計用語辞典(日経文庫))
簡単に言ってしまいますと、現在雇用している社員が将来退職する際いくら退職金を支給し、そして退職後にどれだけ企業年金を給付していくかを見積もって支払義務として計上したものが「退職給付引当金」です。
また、退職金と言っても頑張った社員に功労金として支払うような性格のものではなく、「勤続○○年で×××万円」というようにしっかり制度化されているものでなくてはなりません。
それは制度としての退職金でない場合、上記の定義の(3)のように将来の退職金を合理的に計算することが難しいためです。
さらに上記(2)には「労働の対価としての性格」とありますが、「退職給付会計」における退職金はあくまで月々の給与の一部を後払いしている、という考え方です。
ですのでやはり功労金のように「会社に大きな貢献があった人にだけ支払う」というものは対象となりません。
そして(1)の「退職一時金制度及び給付建の企業年金制度を会社が採用」という要件ですが、これも実務上重要となります。「退職一時金」というのは一般的に退職金と呼ばれているもので、退職する際にまとめてドカンと受け取るものです。
「企業年金」は国民年金や厚生年金のように「毎月××万円」というようにして受け取るものですが、その中でも「給付建」の制度のものだけが「退職給付会計」の対象となります。
ところで今から15年ほど前、「日本版401K」という言葉をよく耳にしていたことをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。これはまさに「企業年金」を含むいわゆる私的年金(国民年金・厚生年金といった公的な年金ではない年金)の話題でした。
「日本版401K」は「確定拠出年金」というもののことで、将来受け取る年金のために一定の金額を「拠出」する、というものです。
特徴としては、「拠出」する掛け金は「確定」すなわち定額なのですが、その積み立てた掛け金の運用成績次第で将来受け取る年金額が変わります。
それに対して「確定給付年金」というものがあり、こちらは将来の年金「給付」額が「確定」しており、その年金の額から逆算して掛け金を決定することになっています。
結論を申しますと、「退職給付会計」の対象となるのは後者の「確定給付年金」のみです。
「確定給付年金」においては、積み立てた掛け金の運用成績が悪化した場合、「確定」している「給付」額を確保するために差額を会社が負担しなければなりません。
これが上記の定義の中にあった「年金資産等の積立不足」であり、その会社負担分をあらわすものが「退職給付引当金」であるという訳です。
それに対して「確定拠出年金」は運用成績が良かろうが悪かろうが年金はその結果残った積立額からそのまま支払うことになりますので、会社が追加で負担するものはありません。
ですので特に将来の支払の見積りなどは必要でないため、「退職給付会計」の対象とはならないのです。
「退職給付引当金」については今回の解説のように結構理解が難しい面も少なくありません。
計算方法もかなり複雑なのですが、そちらは次回簡単にご紹介いたしたいと思います。
今回はここでゲームセット!
今日も早く仕事を終えて自主トレだ!!
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