資本の払い戻しも、配当課税の対象?!
今回は、資本剰余金を配当する際の処理について考えてみます。
配当を行なうには、財源として剰余金がなくてはなりません。
この場合の剰余金とは通常、貸借対照表の純資産のうち「その他資本剰余金」
と「その他利益剰余金」の合計額を意味します。
一般には、「その他利益剰余金」を配当するケースが多く、その際の処理は、『繰越利益剰余金』等を減少させます。なおこの場合、税務上も配当として取り扱われるため、源泉所得税の課税対象となります。
一方、「その他資本剰余金」を配当する場合は、会計上は『資本剰余金』(または、『資本金減少差益』、『資本準備金減少差益』等)を減少させます。
ただ、利益が財源でないことから、課税対象にならないとの誤解も少なくないようですが、この場合も所定額(配当額のうち、資本金等相当額を超える額)は課税対象となります。
資本金等相当額とは、「配当直前の資本金等の額」に「純資産に対する配当割合」を乗じたもの
(配当直前の資本金等の額×「資本剰余金配当額÷前期末の帳簿純資産額」)
を意味します。
つまり税法上は、資本金等の額のうち、純資産に対する配当割合分だけを出資の払戻しと考え、それを超える分は利益の分配(課税対象)と考えます。
ところで、会社法施行(H18.5)前(旧商法適用下)における、いわゆる有償減資(減資と同時に現金等を払い戻すこと)は、現行会社法の下では、
○まず、減資により『資本金』を『資本剰余金』とし、
○次に、その『資本剰余金』を配当する、
といった2段階の行為に該当します。
したがって、この場合も先ほど同様、結果として配当課税の対象となります。
○株主総会の決議により、資本剰余金(資本金減少差益)100万円を現金にて配当しました。
なお、準備金の額はすでに資本金額の1/4に達しています。
また、配当直前の資本金等の額は2,000万円、前期末の帳簿純資産額は5,000万円、
配当の源泉税率は20%です。
(借方)資本金減少差益 100万円
/(貸方)預 り 金 12万円
現 金 88万円
※純資産に対する配当割合:100万円÷5,000万円=0.02
※資本金等相当額:2,000万円×0.02=40万円
※課税対象額:100万円−40万円=60万円
※源泉所得税額:60万円×20%=12万円
出典:研修出版 経理WOMAN
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