消費税を学ぼう!(9)~控除ができないと還付も受けられない~
お疲れ様です。ヨシオです。
令和元年度(第69回)税理士試験から2カ月余りが経ち、12月の合格発表までようやく2カ月を切りました。
今年の秋は台風15号及び19号による甚大な災害に見舞われましたが、税理士試験受験生の皆様の中にも被災された方がいらっしゃるかと思います。
まずは一日も早い復旧・復興、そして落ち着いて勉強ができるような普段の生活が少しでも早く戻ってくることをお祈りいたします。
なお被災された地域への義援金は各所で募集されていますが、日本赤十字社については以下のページにまとめられています。
http://www.jrc.or.jp/contribution/
日本赤十字社を通じて行った義援金は「特定寄附金」として寄附金控除の対象にもなりますので、みんなで被災地を応援しましょう!
さて今回も以下の「消費税のあらまし」を使ってお話ししてまいりたいと思います。
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aramashi/01.htm
前回は「免税事業者は仕入れの際に支払った消費税を控除することができない」ということをお話いたしました。
実はこの点が免税事業者の最大のデメリットなのですが、その理由について今回はお話してまいります。
まず前回の最後に示しました17ページの一番下の「Q&A」を再度引用します。
Q.「設立1期目である今期は設備投資が主で、売上げはほとんどありません。
このような場合、課税事業者であれば還付を受けることができるということですが、どうすればよいでしょうか?」
A.「設備投資が多額にあった場合や、輸出業者のように売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多く、経常的に還付が生ずる事業者については、免税事業者であっても課税事業者を選択することによって、消費税の還付を受けることができます。」
この「Q&A」の会社は簡単に言えば「仕入れだけあって売上げがない」という状態です。
消費税に焦点を当てると「仕入れの際に消費税を支払ったが、受け取った消費税はない」ということになります。
以前からお話しているように、事業者は「受け取った消費税-支払った消費税」の金額を納税しますが、「受け取った消費税」がない場合この計算式の答えはもちろんマイナスになってしまいます。
そのようなケースではどうするのか、というのが上記「Q&A」の中にもある「還付」です。
この「還付」については、28ページの「もっとくわしく」「こんなときの計算方法は...」の「⑤」に以下のように書かれています。
「仕入控除税額が課税売上げに係る消費税額より多い場合は、申告により、控除できない消費税額(差額)の還付が受けられます。」
「仕入控除税額」というのは、これまで言ってまいりました「支払った消費税」のこと(厳密にはその一部)です。
(「仕入控除税額」の詳細については、後日解説する予定です)
つまり「受け取った消費税-支払った消費税」がマイナスになった場合、そのマイナスの分は「還付」、すなわち税務署からお金を返してもらえるのです。
消費税を負担するのはあくまで消費者であるため、事業者が「支払った消費税」は基本的に「受け取った消費税」から「控除」しますが、もし「受け取った消費税-支払った消費税」がマイナスで「控除」できない場合には「還付」を受けられる、ということです。
このように事業者が消費税を負担することは原則としてない訳ですが、例外的に消費税を負担することになってしまうこともあるのが「免税事業者」なのです。
前回お話した通り「免税事業者」は支払った消費税の「控除」ができず、それは同時に「還付」を受けることもできないということを意味しています。
「免税事業者」のそのような立場を踏まえた上で、上記の「Q&A」が出てきます。
ちなみにこの「Q&A」のような設立1期目及び2期目の会社は、何も手続きをしなければ基本的には「免税事業者」となります。
(「基準期間」に該当する前々期が存在せず、当然「基準期間の課税売上高」もゼロであるため)
上記「Q&A」の会社と同じく設立当初は活動の中心が設備投資となり、なかなか売上げという成果まで辿り着かないという会社は実際少なくありません。
そしてそのような会社が「免税事業者」のままであった場合、「課税事業者」であれば受けることのできた消費税(投資に際して支払ったもの)の還付もなく、その分「課税事業者」より金銭的な負担が重くなってしまいます。
それはあまりにも不憫だと国が考えてくれたのかどうかは分かりませんが、上記「Q&A」にあるように「免税事業者であっても課税事業者を選択することによって、消費税の還付を受けることができ」るようになっています。
なお「免税事業者」が「課税事業者」を選択するためには「消費税課税事業者選択届出書」という書類を税務署に提出することが必要となります。
(「消費税課税事業者選択届出書」については、18ページや54ページをご参照下さい)
ところで「消費税を学ぼう!(5)~消費税の納付が免除に!?~」の回で「免税事業者」による消費税の「益税問題」について少し触れました。
その際にいわゆる「益税」の他にもお金を得る方法が存在していたとお話いたしましたが、それにはこの「消費税課税事業者選択届出書」が関わってきます。
次回はその方法、そしてその対策のために行われた消費税法の改正についてお話してまいりたいと思います。
という訳で、今回はここまで。
次回もお楽しみに~
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