税理士ビッグバンとは?
お疲れ様です。ヨシオです。
以前当コラムでは「日本税理士会連合会」のウェブサイトについてお話いたしました。
その際にもご紹介した「税理士となるには」のページにある、学生向けパンフレット「税理士って?一生の仕事を探すなら」が今年になってリニューアルされました。
http://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/prospects/zeirishikai_pamph_1903.pdf
学生などの若い人たちに、税理士のことを知ってもらうという点では、以前のもの以上に親しみやすくわかりやすいパンフレットになっていると思います。
また、若手税理士の方々による座談会や「税理士あるある」などのコーナーもあり、私たち税理士試験受験生にとっても楽しめる内容になっています。
興味を持たれた方は是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。
さて、当コラムでは前々回、2001年(平成13年)が初版の書籍「税理士・春香の事件簿」をご紹介しました。
この書籍のページを最後までめくっていったところ、同時期に出版されていた他の書籍の広告が掲載されていました。
その中にとても興味を惹かれるタイトルの書籍がありましたので、早速入手して読んでみました。
という訳で、今回はその書籍をご紹介したいと思います。
今回取り上げるのは「新版・税理士ビックバン 税理士事務所 生き残り100の新戦術」という書籍です。
出版はやはり2001年(平成13年)の7月、現在(2019年)から18年ほど前になります。
この書籍は弁護士である鳥飼重和さんと公認会計士・税理士の本郷孔洋さんの共著となっています。
鳥飼さんは現在鳥飼総合法律事務所の代表を務められていますが、税理士事務所での勤務経験もある税務に詳しい弁護士の方で、以前「日本税理士会連合会」の顧問もされていました。
そして本郷さんですが、国内有数の大手税理士法人である辻・本郷税理士法人の前理事長であり現在は辻・本郷グループの会長でいらっしゃるという方です。
そんな税理士業界の重鎮であるお二人の著作が本書となります。
「新版・税理士ビックバン 税理士事務所 生き残り100の新戦術」は、タイトルの冒頭に「新版」とあるように2000年(平成12年)に出版されていた「税理士ビッグバン」という書籍の改訂版となっています。
書籍「税理士ビッグバン」がその出版から1年で改訂されたのは、2001年(平成13年)に税理士法の改正が決定したためです(施行されたのはその翌年である2002年(平成14年))。
そしてこの時の税理士法改正の目玉であったのが、今では当たり前になっている「税理士法人」制度の新設でした。
さらに当時はパソコンの普及とそれに伴う会計ソフトの導入、そしてインターネットが急速に広がっていた時期であり、税理士にとってはまさに激動の時代であったようです。
そのような情勢の中で税理士の未来を展望して書かれたのがこの「新版・税理士ビックバン 税理士事務所 生き残り100の新戦術」であり、以下6つの章で構成されています。
第1章 税理士ビックバンって何?
第2章 税理士ビックバンで税理士はどう変わる?
第3章 海外の税理士ビックバン
第4章 税理士ビックバンの法的根拠と対応
第5章 どうする?税理士の生き残り策
第6章 総合法律経済事務所設立・運用マニュアル
これら6つの章で合計100個のテーマについての解説・提言がなされており、それがタイトルにもある「100の新戦術」となっています。
まず、本書のタイトルでありメインテーマである「税理士ビッグバン」ですが、2001年(平成13年)の税理士法改正やそれに付随する規制緩和を本書では指しています。
この時の税理士法改正には前述した税理士法人制度の新設のほか、資格制度の整備や税務訴訟において税理士が代理人の補佐人として陳述できるようになる、などの内容が含まれていました。
また、その他の規制緩和としては、広告規制や報酬規制の緩和、さらには税務代理などの独占業務がなくなることも本書の中では想定されています。
実際には現在においても税理士の独占業務はなくなっていませんのでこの点については杞憂であった訳ですが、当時はそれ程の危機感が持たれていたということを本書では窺い知ることができます。
その他にも「大手会計事務所による寡占化が進む」「記帳代行業務が縮小する」など、まさに現在の税理士業界を見通されていたような予測もされています。
そんな中で著者のお二人がこれから税理士が生き残っていくための方策として提言されているのが、以下のような内容です。
・他の士業とネットワークを構築し、顧客のあらゆるニーズに対応できるようにする
・さらに進めて他の士業と共に総合事務所を設立し、ワンストップサービスを提供する
・特定分野に強みを持つ業務特化型の事務所にする
・財務会計だけでなく、管理会計やキャッシュ・フロー会計に力を入れる
・顧客の自計化を支援する
・資格にあぐらをかかず、サービス業に徹する
...等々、現在の税理士業界に当てはめても、ほぼそのまま通用するような内容の提言ばかりです。
例えば顧客の自計化についてですが、以前当コラムでご紹介したJDLの「カモクの女」というWEBドラマの第3話(2019年4月公開)でも未だにそれがテーマとなっています。
http://www.jdl.co.jp/c-tax/episode03.html
このドラマの中では自計化が進んでいない顧客からの領収書がほとんど整理されずに会計事務所に届けられていますが、それが現在においても決して珍しいことではないのでしょう。
ヨシオとしては20年近くも前からこのような課題を解決するための提言をされていた著者のお二人の先見性に感服すると同時に、その後大きく変化することができなかったこの業界の持つ問題の根深さをあらためて強く感じました。
今回は書籍「新版・税理士ビックバン 税理士事務所 生き残り100の新戦術」をご紹介しました。
約20年前の書籍ということで、もちろんやや現代にはそぐわないような内容も全くない訳ではありません。
しかし、例えばインターネットの発展による影響についてなどは、本書の中では「予測できません」と正直に書かれています。
その後のネット社会のとてつもない急成長を知っている現在から見ると、逆に予測できないほどの発展を想定されていたこと自体凄いことだな、とヨシオは感じました。
また、これは完全に個人的なことなのですが、本書のテーマとなっている「税理士ビッグバン」はそもそも世界貿易機構(WTO)設立につながる「ウルグアイ・ラウンド」交渉がきっかけであった、という本書冒頭の記述が印象的でした。
といいますのも、ヨシオが子供のころ、テレビのニュースでは毎日のように「GATT、ウルグアイ・ラウンドでは~」と流れていて、意味も分からずその言葉だけを覚えてしまっていたからです。
何十年かぶりに「ウルグアイ・ラウンド」という単語を目にし、さらにそれが自分の目指している税理士の仕事にも影響していた、ということを初めて知ることができて少しだけ感動してしまいました(笑)
という訳で、今回はここまで。
次回もお楽しみに~
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