わたしの駆出時代

経理の仕事がいやで、悩んだ日々

Ｂ株式会社
Ｏ・Ｉ

◎住宅建材製造・販売
◎社員数：４５０名


短大卒業後に就職しましたが、経理の仕事はやりたくない、と思っていました。
それなのに経理部に配属されてしまったのは、多分履歴書に「得意科目：数学」
と書いたからでしょう。

最初にした仕事は、売上伝票の集計。「経理って計算する仕事が多いんだなぁ」
と思いましたが、数学と違ってちっとも面白く感じられませんでした。

それに、周りの人たちが皆黙々と仕事をしているのも、気づまりでした。

帳面に、数字や文字を小さく書きこまなくてはならないことにも苦労しました。
元々学生時代は、マス目いっぱいに大きな文字を書いていたので、最初のうちは、
小さい文字を書くのが難しかったんです。「就職してから、ずいぶん小さな字を
書くようになっちゃったね」と親に言われたときは、悲しい気持ちになったもの
です。

そして何よりも、やりたくないと思っていた仕事なので、まずやる気を出すのが
大変でした。やりがいや面白さを見つけられなければ、仕事もはかどりません。

でも、幸い上司や先輩がやさしかったので、なんとかやっていけました。
今ではお恥ずかしい限りですが、新入社員のころは、主任と交換ノートのような
業務報告のやり取りをしたものです。
その中で、ずいぶん励ましてもらった記憶があります。

私が経理の仕事をしたくない、と思っているのがなんとなく上にも伝わったの
でしょう。
あるとき取締役に呼ばれて、「経理のない会社はない。経理の強い会社はつぶれない。
経理ができればどこでも働けるんだよ」と諭されたことがありました。

周りからこんなに心配してもらって、申し訳ないという気持ちもあり、とにかく
いやだと思ってやると仕事がつらいし、分からないことがあると投げ出してしまいたく
なるので、とりあえず簿記の勉強を始めてみました。

そして、簿記のシステムがいかに合理的にできているかということを知って驚きました。
これを作った人は、天才だと思いましたね。段々簿記が分かってくると経理も面白く
感じられるようになり、やりがいのある仕事なんだな、ということも理解できるように
なったんです。

取締役の言葉は、私に経理の仕事をやらせたいだけの方便だと思っていましたが、
その意味が次第によくわかるようになっていきました。


出典：研修出版 経理WOMAN