標準原価計算(2)
こんにちは!
今回も引き続き、標準原価計算のお話です。
今日は具体的に製品の話をしながらお話します。
標準原価計算(2)
【出題】
製品Aを量産するX社は、パーシャル・プランの標準原価計算を
採用している。次の資料にもとづき、製造間接費の差異分析を行いなさい。
なお、差異分析では変動予算を用いて予算差異、能率差異、
操業度差異を計算すること。
このとき、能率差異は変動費と固定費からなるものとして計算しなさい。
【資料】
1.当月実際製造間接費 1,588,000(内訳変動費 628,000
固定費 960,000)
2.当月の実際直接作業時間は7,800時間であった。
3.当月生産データ
月初仕掛品 200個(進捗度50%)
当月完成品 2,400個
月末仕掛品 400個(進捗度50%)
4.製品Aの1個当たりの標準直接作業時間は3時間である。
5.年間製造間接費予算 19,200,000
(内訳:変動費 7,680,000
固定費 11,520,000)
6.年間の正常直接作業時間は96,000時間である。
(注)製造間接費は直接作業時間を基準として製品に
配賦されている。
【解答】
(1)操業度差異
まず、当月の直接作業時間は何時間であったでしょうか。
7,800時間でした。
予算では、8,000時間稼働することになっているので、
答えは(8,000-7,800)×120=24,000と計算されます。
(操業度差異は、固定費のみを問題視します)
●実務上はここからが問題です。
ではなぜ、7,800時間しか操業しなかったのでしょうか。
予算では、1箇月に約2,660個生産する(8,000÷3)となっているのに、
2,400個の完成品しか生産しないで、生産をやめてしまった理由は?
考えられる理由は2つあります。
①製造工程で故障が生じ、200時間の操業短縮をせざるを
得なかった。
この「故障」について考えます。
1日は24時間で、フル操業しても、1ヶ月間に720時間しか、
稼働できません。
「標準」作業時間が8,000時間ということは、少なくても
12ラインがこの製品製造に携わっている計算になります。
また、1個製造するのに3時間も掛かりますから、相当高価な
製品であることが推測されます。
そのような高価な製品を製造する場合には、
通常24時間態勢ではなく、予備時間を設けるため、
1ライン当たり最大でも12時間程度の予定を組みます。
そうすれば、どこかのラインが故障しても、他のラインを
超過稼働することにより、受注品の欠品を防ぐことが可能です。
以上から、この200時間稼働が少なかったのは、製造ラインの
故障ではないことが推測されます。
②注文が、2,400個以下で、これ以上製造すると過剰在庫に
なるので、生産数を抑えた。
おそらく、これが、操業を200時間短縮した理由でしょう。
上で述べましたが、1個製造するのに3時間も掛かる製品
ですから、相当高価であり、材料費も多く掛かると推測
されます。
そこで、受注が計画よりも少ないのに、計画通りに製造すると
過剰在庫となり、資金繰りを圧迫します。
だから、8,000時間の予定を7,800時間でやめてしまった、
と推測するのがこの場合には妥当でしょう。
③以上、2点の推測から、この操業度差異¥24,000の責任
は、営業部にあり、製造部の責任ではありません。
きめ細かな販促活動が望まれます。
弊社は掲載された内容に関し、如何なる保証もするものではありません。
また、記載されている事項は変更される場合がありますので、予め御承知おき下さい。