勤務税理士は、組織人でありながら、専門家でもある存在。常に独立したマインドを持って、仕事のスキルを高めていくべきです。しかし、組織の中で仕事がルーティン化し、モチベーションが下がってしまっている若手勤務税理士は多いものです。

【「新しい時代」を感じさせる仕事ぶりを】
組織内で活躍することを単に出世の問題と捉えると、目標を見失いやすくなります。責任ある立場に就けば、扱う仕事の専門性、外部とのつながりが深化します。深い知識・人脈は、独立、あるいは転職する際に得難い武器となることを忘れてはなりません。

現実的に、勤務税理士が組織内で認められるためには、所長税理士からの評価を高めていくことが必要となります。しかし、専門家として所長に一目置かれることは、おべっかを使って気に入られるといったことではありません。

トップが若手を本当に認めるときは、その人が自分に持っていないモノを身につけていると感じた時。言い尽くされた言葉ではありますが、ほかの人に負けない得意分野を持つことが重要となります。

特に所長に頼られるのは、新しい時代に適合した知識・技術を持っている人です。卑近な例では、パソコンが得意な勤務税理士が、ITに疎い高齢の所長から会計システム導入のスタートアップや、顧問先のIT企業の担当者を任されるケースは多いと思います。

【激動の社会に税理士業務を関連付ける】
また、社会状況が大きく変化している業界では、関連する法律の改正が頻繁に起こります。例えば、最近の顕著な社会変化として高齢化があります。それにともない、介護事業者からの相談件数が増えてきたという声はよく聞かれるところです。

しかし、介護保険法の施行から10年以上経っているにも関わらず、毎年のように変わる介護事業の報酬体系等の制度に詳しい税理士が少ないのが現状。複雑な制度を理解している会計事務所から財務コンサルを受けたいと考えている介護事業者のニーズは確かにあります。

そのような新しい知識は、学習意欲が強い若手にとって抜きん出るチャンスと言って良いでしょう。

そして、若手が意識すべきことは、社会の中で、自分の世代が共通して持つ「リアリティ」です。多様な業種に携わる同年代の友人たちも、これから年齢を重ね、会社で枢要な地位に就いていきます。同年代の職業人が持つ将来展望や悩みなどの話には、ビジネスチャンスが生まれる可能性が詰まっています。

税務会計の手法はそれほど変わらなくても、社会のめまぐるしい変化に関連付けて自らの仕事を見れば、決してルーティンではありません。自分の周りに展開する、上の世代に見えない景色を客観視することから、所長との「差別化」が始まるのではないでしょうか。