「会計基準の変更と実務Ⅰ」
「経理実務の学校」に寄せられる実務家の悩みをDr.Kが解説!
(Q)会計基準の最近の動きと実務への影響を「基準毎」に教えてく
ださい。
(A) 日本の会計基準が国際会計基準へコンバージェンス(収斂化・
共通化)し、さらにアドプション(全面採用)する流れになって
いることはご承知でしょう。今回から主な会計基準の変更の実務
への影響を述べましょう。
① 日商簿記検定から後入先出法がなくなりました。これは「棚
卸資産の会計基準」が変更されたからです。市況変動を適切に財
務に反映させるため後入先出法を廃止しました。
石油、鉄鋼、非鉄などの素材関連企業は従来後入先出法を採用し、
過去に仕入れた在庫の価値を適切に反映せず、含み損益が存在し
ました。来年3月期からは強制適用されます。新日本石油や出光
興産が本年3月期から早期適用しています。
「棚卸資産の評価に関する会計基準」:
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/tanaoroshi/tanaoroshi.pdf
② 築地市場の移転が移転先の土壌汚染で問題化しています。汚
染を除去するには莫大な費用がかかります。企業が所有する「資
産を除去する費用を債務として認識する会計基準」が来年3月期
から強制適用されます。アスベストやダイオキシン類の除去や原
発の解体費用など法令で除去が義務付けられている汚染物質処理
が主な対象ですが、鉱山など採掘終了時の安全確保なども対象で
す。すなわち固定資産の将来撤去費用を見積もり、当該債務を負
債に計上することとなります。
ファミレスやスーパーなどでは賃借物件から退店する際の原状回
復費用も計上しなければなりません。適用初年度には過年度分の
未処理額を特別損失に一括計上が必要ですので、特殊要因として
注視すべきです。
「資産除去債務に関する会計基準」:
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/aro/aro.pdf
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