不正のトライアングルの例
「経理実務の学校」に寄せられる実務家の悩みをDr.Kが解説!
(Q) 「不正のトライアングル」の具体例を挙げてみてください。
(A) 「不正のトライアングル」の構成要素は、
①動機(プレッシャー) ②機会③正当化根拠 です。
①〜③がそろったときに不正行為が行われます。
粉飾決算(有価証券報告書への虚偽記載する)の例で考えてみまし
ょう。上場後3年目くらいで新興企業は次のような事象が発生する
傾向があるそうです。
1. 新興企業の場合、上場後3年くらいすると、ビジネスモデルが
陳腐化してきて、資金繰りが圧迫し短期借入更新時に、メインバン
クから中期事業計画を要求されます。事業計画は現実と乖離した希
望的計画となり、この計画実現が経営者にとってのプレッシャーに
なります。
2. 上場後は「株主」からの突き上げが厳しくなり、経営者は株価
の変動に一喜一憂するようになります。内部統制やガバナンスなど
を充実したいという経営者の行動は株価向上へ直接結びつかず、業
績の浮沈が株価を左右するようになると、「株主」に喜んでもらう
ことばかりを考えるようになります。
3. 上場前の2年(法定監査の義務付け期間)と上場後の3年で、
経営者のクセまで知った会計士が、会計士のローテーション制度で、
担当からはずれ、別の会計士が担当者することになります。5年間
経営者と付き合った前会計士は経営者の虚偽が顔色を見ただけで判
断できたのですが、付き合いの浅い後任会計士には気付かれないだ
ろうと、経営者の心に粉飾への誘惑が芽生えてきます。
これらの事象を「不正のトライアングル」の要素に当てはめると、
① 銀行から事業計画の提出を迫られ、この希望的事業計画に縛ら
れることが粉飾に手を染める「動機(プレッシャー)」となります。
② 会計士のローテーション制度によって、粉飾の「機会」が与え
られたようなものです。
③ 株主のご機嫌伺いに徹するようになり、粉飾してでも株価を上
げようとすることが悪くないと「正当化根拠」になってきます。
粉飾という不正行為は、経営者トップの単独で実施できるものでは
なく、取引先の協力、他の役員の黙認、さらに東証マザーズ上場の
(株)エフオーアイのように、上場前から粉飾し、上場たった半年
で倒産した例もあり、一概には言えません。
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