「経理実務の学校」に寄せられる実務家の悩みをＤr.Ｋが解説！

（Ｑ)先の「日本の通貨」の項で日本銀行がでましたが、日本銀行は
資本金１億円のジャスダック上場企業ですよね。同じ上場企業の
日本航空は日本を代表する企業だと思っていたんですが、何故倒産
したのですか？


（Ａ) 確かに日本航空はナショナルフラッグキャリアーとして日本を
代表する航空会社でした。それまで民間企業であったのが、1953年
に「日本航空株式会社法」により半官半民となり、1986年まで国際
航空を独占、1987年に民営化されたのですが、設立経緯から国や政
治家との結びつきも影響したのか、結局、事業会社として戦後最大
の倒産に至りました。
国が出資する当時、白洲次郎（注1）は、文芸春秋1954年7月号で
「新しい日航をデッチ上げて政府が半額出資しそうな時に私は反対し
た。一部の人が計画した赤字続きの会社を半分国民に肩代わりするの
は怪しいからと。（中略）意地か虚栄か知らないがこんなことに国民
の血税が流れ込んでいくかと思うと、ただ呆れかえって腹が立つ元気
もなくなる。」（注2）と述べていました。

日航の倒産で、管財人 企業再生支援機構は機構出資などの公的支援
を受けて再建を図るとする更生計画案を、東京地裁に8月末提出。
金融機関の債権カット交渉が続いています。結局、機構支援には国民
の血税が使われるようです。債権カットは金融機関 の収益を圧迫し、
預金者の受取利息や株主配当に影響するでしょう。

かつて白洲次郎が言ったように、為政者の意地や虚栄が読者を含む
国民の負担になってきます。筆者もかつて株主でもありましたが、
日航機を数回しか利用しませんでした。この程度の公共交通機関で
すので、一民間企業の日航にに国民の血税を使うことには疑問があ
るのは筆者だけでしょうか？航空会社間の公平な競争は可能なので
しょうか？ かつての金融システム維持のための金融機関への公的
資金と意味合いが違うと感じてしまいます。

さて、「何故倒産したか？」の答えです。直接的には資金が足りな
くなったからです。人間は怪我で出血したら輸血すれば生き残れま
す。企業も赤字経営で資金垂れ流しでも、資金を注入すれば倒産し
ません。黒字経営になるまで、経理パーソンが頑張って資金繰りを
上手くして資金ショートを回避すれば企業も生き残れるのです。

経理パーソンの役目と重要性が多少見えてきましたか？


注1：白洲次郎（某携帯電話ＣＭの白戸次郎ではなく吉田首相の
ブレーンで、経済産業省の前身の創設に係わった人間です）
ウィキペディア「白洲次郎」を参照

注2：白洲次郎著「プリンシプルのない日本」新潮文庫