IFRSへの危惧 Ⅱ
「経理実務の学校」に寄せられる実務家の悩みをDr.Kが解説!
(Q) 前回はIFRSの危惧 について聞きましたが、他にありますか?
(A) 「会計」では損益計算上「人件費、労務費」は反映されてい
ますが、貸借対照表には反映されていません。経営資源である
「人」「もの」「金」「情報」の「人」が一部欠落しています。
企業活動の成果と現状を開示するのが財務諸表です。と、3月
の本稿の「会計と人材」で述ました。
財務諸表の役割が、従来の伝統的な「会計」(利益計算のツー
ル)から「IFRS」(企業価値の表示)へと変化しようとしてい
ます。
伝統的な「会計」は利益計算のツールですから「人件費、労務
費」計上でヨシとされたのでしょう。
しかし、企業価値の表示に重点を置く「IFRS」では貸借対照表
(財務状態計算書)に企業に働く技術者、研究者、営業マンな
どの「人材」を反映せずには真の企業価値は判断できないはず
です。「近年、システムダウンした時、今はマニュアルをチェ
ックするのに時間を要し復旧に時間がかかるが、以前はシステ
ムの開発に係わった老練な技術者が直ぐに原因を指摘し、直ぐ
に復旧した。」と耳にしました。経験豊かなな技術者等の人材
は企業の貴重な財産です。従業員の頭数や平均年齢だけでは真
の企業価値は判断できません。
投資家は「ファイナンス論理」から、「人材」が含まれないこ
とを承知のうえで「IFRS」を一つの指標にすると思われます。
企業価値の表示に重点を置く「IFRS」になって、「人材」を財
務報告に正しく反映させることは大変困難なことでしょう。
読者は「IFRS」=「企業価値の表示」と短絡的に理解せず、
「ファイナンス論理」が前提にあることを念頭においては如何
でしょう。
弊社は掲載された内容に関し、如何なる保証もするものではありません。
また、記載されている事項は変更される場合がありますので、予め御承知おき下さい。