IFRSへの危惧 Ⅰ
「経理実務の学校」に寄せられる実務家の悩みをDr.Kが解説!
(Q) 国際会計基準の強制適用が本格化してきましたが、我が国の
経済産業への影響で懸念される点はなんですか?
(A) 6月中旬の本稿でIFRS(International Financial Reporting
Standards)を「国際財務報告基準」とせず、何故、多くが「国
際会計基準」と訳して使っているかを説明しました。
「国際会計基準」から「国際財務報告基準」への変更は、従来
の「会計」の基準から新たな「財務報告」の基準に変わったと
いうことです。伝統的な「会計」には、利害関係者のための利
益計算を起源として、利益計算開示による企業評価制度が取り
入れられてきました。期間損益計算が根底にあったのです。
ところが、財務諸表の役割が従来の「利益計算のツール」から
「企業価値の表示」へと大きく変化してきたため、、IFRSの目
指すところが、「会計」から離脱し、より「ファイナンス論理」
に沿った企業価値評価をすることとなってきました。
現行の会計実践においては「過去の利益を計算する利益計算の
基準」すなわち「原価主義」が支配的です。
IFRSが念頭に置く「現在価値(present value)あるいは公正
価値(fair value)」は「原価主義」のように確定した価値で
はなく将来キャッシュフローに基づいた予想価値です。将来キ
ャッシュフローは、短期的には真実性があります(予想が当た
る)が、長期的には真実性は希薄化します(予想が当りにくく)
したがって、IFRSは短期投資家には有効なツールとなりますが、
長期的視点では、長期投資家、経営者や実務家にとっては有効
性は希薄です。
IFRSのもとでは、短期投資家による価値判断で景気変動の振幅
が増幅し、貨幣価値の安定に危惧が生じます。
当然、経済産業界金融界への悪影響が危惧されます。
IFRSは「会計」の基準ではなく「財務報告」の基準です。
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