日本公認会計士協会・定期総会~岸田総理、サステナビリティ開示の重要性を語る~

去る7月26日(水)、第57回日本公認会計士協会定期総会(於:帝国ホテル)が開催された。

岸田首相、異例の2年連続登壇~「新しい資本主義」の実現に向けて~

開会にあたり、昨年に引き続いて来賓として駆け付けた岸田総理は、まず、「新しい資本主義」の旗印の元、様々な社会課題を成長のエンジンに展開した。

官民連携して力強い成長を実現するため、構造的賃上げ、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、スタートアップ育成、さらには資産所得倍増計画の実行に正に取り組んでいる段階であると宣言した。

コーポレート・ガバナンス改革

そのためのコーポレート・ガバナンス改革の実質化、企業の中長期的価値上場に資するため、海外投資家を含む、幅広いステークホルダーからの意見聴取も行った。

その意見も踏まえ、2023年4月に策定したアクションプログラム基づき、①上場企業における収益性と成長性を意識した経営、②サステナビリティ(持続可能性)を意識した攻めの経営、③企業と投資家の中長期的視点に立った建設的な対話の促進の重要性を強調した。

非財務情報開示の充実

とりわけ、②に関連して、非財務情報開示充実のため、有価証券報告書の記載事項として、人的資本、多様性(ダイバーシティ)の視点から、人材育成方針、男女別賃金、女性管理職比率などを定め、気候変動対応(TCFD)とともに2023年3月期より開示義務適用を開始していると述べた。

公認会計士への期待

いうまでもなく、企業のディスクロージャーは、投資家の対話の前提となる重要なものであり、公認会計士に対しては、情報開示の信頼性を確保する職責を果たすことにより、社会課題の解決を通じた企業価値向上に資金が集まる流れを実現する「新しい資本主義」の推進力になっていただきたいとのエールが送られた。

「サステナビリティ能力開発協議会」の設置

かかる企業経営や投資判断におけるサステナビリティの重要性の急速な高まりと、これを反映したサステナビリティ情報開示・保証に関する国際的要請を受け、日本公認会計士協会では、本総会において、公認会計士のサステナビリティに関する知見・能力を向上させることを目的として、「サステナビリティ能力開発協議会」の設置が承認された。

公認会計士がサステナビリティ情報の開示・保証に関し、ステークホルダーの期待に応える真のプロフェッショナルと成り得るか否かのチャレンジである。

加速化する国際基準整備の動向

おりしもISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、本年6月に最初の基準としてIFRS S1号及びIFRS S2号を公表した。EUでは、既に、サステナビリティ報告への第三者保証が義務付けられる企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を本年1月に発行している。

サステナブル・ビジネスが世界を救う?

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を達成するためには、2030年までに年間約1300兆円の市場機会が生まれると言われる。また、UNEP(国連開発計画)では同じく年5~7兆ドル、デロイトは17分野で計3000兆円の市場が生まれると試算している。

今後、サステナビリティ関連のビジネス領域が飛躍的に増大し、世界経済の起爆剤になることは想像に難くない。

著者プロフィール

三宅 博人(みやけ ひろと)

【現職】
公認会計士
公益財団法人日本内部監査研究所 研究員
経済人コー円卓会議日本委員会 監事
日本コーポレートガバナンス・ネットワーク 企画委員

【専門分野】
コーポレート・ガバナンス、内部監査、リスクマネジメント、CSR(企業の社会的責任)、サステナビリティ 等

【経歴】(関連諸団体のみ)
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 客員教授
日本公認会計士協会 会計士補会・代表幹事/最高顧問、国際委員会・委員(国際監査基準担当)、東京会・広報担当幹事
日本公認不正検査士協会 評議員
日本内部統制研究学会(現・日本ガバナンス研究学会)監事

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