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第2章 決算書の閲覧 第2節 中小企業(決算広告を用いる方法)

1.中小企業の決算書はなかなか見れない?

次に中小企業の決算書の閲覧について述べます。中小企業の決算書は、大企業に比べると閲覧のハードルがグッと上がります。規模が小さくなるに従って閲覧自体ができない可能性も高いです。建前論としては、決算公告という方法ですべての株式会社の決算書を見ることができるので、それについてまずは説明します。

2.決算公告とは

決算公告とは、会社法の規定に従って、決算書を世の中に対して公表することです。ただしこの規定において、大会社は貸借対照表と損益計算書の両方を世の中に公表しなければならないことになっていますが、それ以外の会社は貸借対照表のみを公表すればよいことになっています。大事な規定なので、全文を紹介しておきます。

決算公告の方法は、官報や日本経済新聞等の日刊新聞へ掲載することが以前は主流でしたが、近年は自社のホームページに掲載することも認められるようになったので、ホームページへの掲載が大幅に増加しています。ただし、官報や日刊新聞であれば貸借対照表の要旨のみ掲載すればよいのですが、ホームページに掲載する場合は、中小企業(大会社以外の会社)であっても、貸借対照表の全文を掲載することとされています。

(決算書類の公告)
第440条
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない

3.決算公告を行っていない会社がある?

以上より、中小企業の決算書は決算公告という法の決まりに従って閲覧することができるということになるはずなのですが、あくまでもこれは建前です。決算公告をすべての株式会社がきちんと行っているかというとそういうわけでもありません。

中小企業の経営者の中には、そもそも決算公告という制度自体を知らないという方も多くいますし、知っていたとしてもやっぱり自分の会社の経営状況を他人に見られたくないという心理から決算公告を行わないという経営者もいます。

また、官報や日刊新聞で決算公告を行うとそれなりのコストも必要になります。決算公告を行わなかった場合は、代表者等の役員が100万円以下の過料に処されるという罰則規定もあるのですが、実際に罰則を受けたという事例は無いようです。このように、決算公告を行わなくても事実上罰則がないので、決算公告を行わない中小企業が多いのだと思います。

よって中小企業の場合は、決算公告によって決算書を入手できるはずなのですが、決算公告を行っていない株式会社もたくさんあるので、この方法では入手に限度があると言わざるを得ません。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。