■はじめに 純粋持株会社を設立する方法として7つの方式が挙げられます。 設立時の親会社の組織形態、企業グループの運営形態、および、純粋持株会社の目的に応じて一連の方法の取捨選択を行うことになります。
■分社方式 特定の事業部門を分離・独立させて子会社を作ることを「分社」といいます。 分社により設立された子会社群を統括し企業グループを運営することを「分社経営」と言います。 わが国では、大企業から中小企業まで分社経営は幅広く行われています。
また、積極的な事業再構築(リストラクチャリング)の手法としても幅広く行われています。 従って、一般の事業会社の場合は最もなじみ易いと考えられます。
分社方式による場合、会社の事業部門を各々の事業を担う事業子会社として分社します。 分社後の親会社には戦略スタッフだけ残して、純粋持株会社に衣替えします。 分社の手法として大別して「現物出資」による方法と「営業譲渡」による方法があります。
@現物出資による方法 (a)現物出資による新会社の設立 事業部門の財産を現物出資して事業子会社を設立する方法
(b)新会社設立後の現物出資 一旦金銭出資で事業子会社を設立し、設立後に事業部門の財産を現物出資する方法。
(c)既存子会社に対する現物出資 既にある子会社に事業部門の財産を現物出資して事業子会社を設立する方法。
A営業譲渡による方法 (a)事後設立による営業譲渡 金銭出資で事業子会社を設立し、設立後に事業部門の営業(財産)を会社に譲渡する方法。 事業子会社からみれば営業譲渡を行う。設立時に営業譲渡の対価の資金手当てが必要。
(b)財産引受による営業譲渡 発起人による財産引受契約を受けて事業子会社を設立し、契約に基づいて事業部門の営業(財産)をその会社に譲渡する方法。事後設立同様、営業譲渡の対価の資金手当てが必要になる。
(c)既存子会社に対する営業譲渡 既にある子会社に事業部門の営業(財産)を譲渡し、事業子会社として再編する方法。 この子会社の営業譲渡支払資金を確保する為に増資、長期貸付などの資金対策が必要。
現物出資、営業譲渡には独占禁止法上の届け出、商法上の検査役の調査(一定の場合には不動産鑑定士の鑑定評価・弁護士の証明で代替可能)などの法律手続が必要です。 公開会社の場合には、証券取引法の規制を受けることになります。 又、圧縮記帳制度、土地超過制度など税法規制も多岐に渡っており、税務対策も重要です。 さらに、以上見てきたいずれの方法による場合も、事業子会社として分社される事業部門は、事業部、ビジネスユニットなど一体性のある事業体として社内分割されていることが前提です。 従って、機能別組織体制の会社など社内で事業分割されていない会社は、一足飛びで分社経営を行うことには無理があります。 まず、事業部制の採用など、企業内分社を検討することが望ましいです。
■事業兼営持株会社再編方式 わが国の大企業、中堅企業の多くは親会社本体で事業を行うと共に、傘下に事業子会社をもつ事業兼営持株会社です。 事業兼営持株会社の場合、事業子会社の運営を通して分社経営の枠組は、出来ているということが出来ます。
これらの会社を純粋持株会社に再編する為、親会社内部で運営されている事業部門を分社して事業子会社として独立させ、既にある事業子会社と並列に位置付ける方式が適しています。 完全分社後の親会社は戦略スタッフだけ残る純粋持株会社となります。

■カンパニー制組織再編方式 カンパニー制は持株会社解禁前の企業グループの組織形態としては持株会社経営に最も近い形態です。 カンパニー制では、親会社の各事業部門は関連する事業子会社群とともにカンパニーとして一体運営されています。
親会社を純粋持株会社に移行させるためには親会社内の事業部門を分社して関連する事業子会社と統合する方式が適しています。 分社・統合の方法としては各種手法の組み合わせが考えられます。 例えば、既にある各カンパニーの中核的な事業子会社に親会社内の事業部門を現物出資、営業譲渡する方法、カンパニーを統括する新たな事業兼営持株会社を親会社の傘下に設立する方法です。 再編後の親会社は戦略スタッフだけ残る純粋持株会社となります。

■特定部門統括会社設立方式 親会社の傘下に海外事業、重点戦略事業等、特定の事業部門を統括する純粋持株会社を設立する方式です。
欧米・アジアでは、持株会社を自由に活用する外国企業とイコール・フッティング(共通の土俵)で戦うために、わが国の先進的な国際企業は早くから地域統括会社として持株会社を海外主用拠点に設立して域内事業を統括させてきました。
世界規模で事業を展開する大企業の場合、北米・欧州・アジアに地域統括会社を設立し、日本本社と合わせてグローバル四極統括体制を構築している例が見られます。
アジア地域の統括拠点としては、香港、シンガポール、そして最近はクアラルンプール(マレーシア)が選ばれるケースが増えています。 理由として @日本でこれまで純粋持株会社が禁止されていた A香港、シンガポールは投資優遇措置を講じ、持株会社を積極誘致してきたこと B税金、人件費、事務所家賃等のコスト面で日本より有利 Cアジア中央に位置していて、地理的利便性がある
このような経営環境の変化を受け、海外事業を統括する純粋持株会社を日本国内で親会社の傘下に設立することも一つの選択肢として考えられるようになりました。
特に、海外事業関係の書類は、国内事業同様、日本語を基本とし、海外子会社幹部も参加する国際会議を日本語で行っている会社は、親会社の本社社屋内に海外事業統括会社を設置するほうが統括の実をあげる事が出来るのではないかと考えられます。
設立方法として、親会社海外事業部門の分社による新会社設立が基本方式となります。親会社が所有していた海外子会社の株式は新会社に譲渡します。

■分社合併方式 M&A(合併・買収)のスピーディな実行も持株会社経営に期待されます。 まず、当事会社が事業部門をすべて分社して事業子会社を設立します。次に、抜け殻となった当時会社が合併し、合併会社は戦略スタッフを残す純粋持株会社となります。
これらの一連の手続を短期間で行い、合併前の各社は、合併後はそのまま純粋持株会社傘下の事業子会社となるようにします。 このように戦略レベルの統合をスピーディに果たし、現場レベルの統合は、時間をかけて進める手法は日本的経営の骨頂です。

■合併代替方式 持株会社設立により合併と同じ企業結合を実現する方法です。 次に、各株主から純粋持株会社に当時会社の株式を現物出資して純粋持株会社の増資新株の割り当てを受け、当時会社を純粋持株会社の事業子会社として統合します。

■事業整理方式 オーナー経営者の財産保全会社など、従来、純粋持株会社が認められていなかった為に、何らかの事業を行うことにより事業兼営持株会社を設立していたケースに利用する方式です。これらの会社の事業として保険代理店業務、不動産管理業務などが名目的事業として選ばれていました。
これらの会社の目的は株式所有による会社支配ですから、このような名目的事業は事業子会社に移管する等の整理を行い。不採算事業は廃業して、純粋持株会社、すなわち本来の姿に衣替えします。

■設立の法務手続 持株会社が他の事業を営むことについて 子会社の株式取得価額の合計額が会社の総資産額の50%を超える会社と言うことであって、事業活動の目的自体には何らの制限も設けていません。
持株会社を設立するのは、多くの場合「戦略と事業の分離」による事業活動支配を目的とするのですが、これと併せて他の事業活動を営むことは可能です。 従って、例えば持株会社が大きなビルを保有し、これを子会社その他のテナントに賃貸して収益を得るような場合には、定款の目的欄に「不動産の賃貸、管理」などを加える事となります。
子会社の商号と本店所在地について 持株会社を作る方式のうち、まず子会社を作り、そこに持株会社の資産を現物出資したり、営業譲渡したりするやり方は、実際の事業活動を現状のまま続けながら、只、法律上の経営主体が、従来の会社から子会社に移るだけでスムーズに持株会社が実現します。 その際、子会社は、商号をどうするか、どこに設立するか注意して下さい。
通常、このような方式を取る場合、従来の会社の本店とほぼ同じ場所に本店をおくことになるでしょう。しかし、同じ本店所在地に事業目的を同じくする類似商号の会社を設立することは出来ません。
現物出資について 現物出資とは、金銭以外の財産を持って会社に出資することです。 出資の現物は、会社の資産に計上し得るものであれば何でも良く、動産、不動産、株式その他の有価証券、債権、無体財産権、暖簾、営業の全部又は一部でも良い。 しかし、その現物を過大評価して出資者に不当に多くの株式を取得させることを防止するためなどの目的から裁判所が専任した検査役による調査を要するなど厳格な手続を要し、それだけに金銭出資に比べ手間と時間のかかる事を覚悟する必要があります。
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