エグゼクティブマタ−

<特集1 成果主義とコンピテンシー>  2001年11月号創刊号  
インタビュー 「成果主義から経営戦略実現型人事へ」 (No.1-P3)

長尾豊彦氏 三和総合研究所  組織人事戦略部長  プリンシパル
納得性の高い評価と報酬制度を作るためには? 
制度の誤解を解きながら導入の実際を提示。

「成果主義人事」から「戦略実現型人事」への転換
 (リード)
 成果主義は誤解されている。ともすれば従来からの「結果業績主義」を全社的に取り入れるものとして、または業績に貢献していないセクションを洗い出してリストラなどの対象とするため、などなど。いわばブームを借りて、都合のいい解釈がなされている面もあった。最近では本来の成果主義を導入している企業や専門家から「もう、成果主義と呼ぶのはやめよう」との声まで上がっている。当初から「日本型成果主義」をうたってきた三和総研・長尾氏も、いまは「戦略実現型人事制度」と呼ぶようになっている。「真の成果主義とはなにか」「成功のポイントはどこか」をテーマにうかがった。


成果主義とは 
 個人が達成した成果(パフォーマンス)に応じて報酬を支払うこと。年俸制もその1例。ただし、この成果は必ずしも売上や利益などとは限らない。それぞれの職種、個人の置かれた立場に応じた成果が求められる。成果主義を導入した人事制度を構築するには、何を「成果」と定義し、どのような成果を評価の対象とするのか、わかりやすく納得性の高い評価方法はなにか、どのように評価結果を賃金・賞与・昇給などに反映させていくのか、といった仕組みが大きなポイントとなる。

 

成果主義をどうとらえるか? 
 成果主義を人件費の削減ととらえて導入を図る経営者もいる。その場合に、働く側の意識を無視して、経営サイドの意識のみで進めて行くと、短期的な効果はあるかもしれないが、長期的には従業員のモラール低下が起こり、マイナス効果になっていく。
 必ず、「経営側からの視点」と「従業員側からの視点」の2つの視点から考えていく必要がある。
 また最近、「成果主義」という言葉の解釈・イメージの違いから、ともすると「結果主義」「実績主義」といった従来からの手法の延長、または単なる賃金カット手法のように誤解されることも多いため、私たちは「戦略実現型人事制度」と捉えて、真の成果主義の実現していこうと考えている。
 


成果主義のマイナス面をよく耳にするが?
 この数年、ニュースなどで取り上げられた成果主義のうまくいかなかった例や、見直していると言われている例を考えてみよう。

 「賃金事情」(2377)に掲載されていたところによれば、国際証券は、成果主義の導入を図ったところ、経営者の意図と、組合側の反応が食い違ってしまったようだ。経営側は成果と直接関係のない年功的要素や属人的要素を廃止する方向を打ち出した。各種手当の廃止、本給の廃止、資格給の簡素化など、どれをとっても、実質的な基本給カットになると組合側は判断したのだろう。その背景には業界平均より低い賃金実態があった。
 その結果、労組の猛反対を受けいったん白紙に戻されたという。

 また、沢井製薬のケースも興味深い。新聞などでも報道されたが、97年に管理職を対象に導入した年俸制を2000年に撤廃した。その最大の原因は、チームで成果を上げていくタイプの仕事が大半だったこと。個人の成果に帰することのできない以上、年俸制にはうまく合わない。成果による変動部分を賞与の4割に限定するなどし、責任等級制度を設けて10段階あった資格を6等級にまとめた。
 この等級ごとに本給を一本化。さらに目標管理を導入した。
 確かに、チームで成果を上げる場合に、どのように個人に配分していくのかは問題だろう。

 例えば、自動車の販社を考えてみよう。新車を売る営業スタッフは個人の販売実績を反映させる報酬体系がわかりやすい。しかし、修理やメンテナンスを請け負うサービス部門は難しい。個人プレーでは成り立たない。結果としてサービス部門全体として評価されるのであるから、それに応じた体系が必要だ。

 話題となった別の例としては、富士通がある。2001年3月19日付けの朝日新聞では、富士通が成果主義を見直すと大きく取り上げていた。成果主義をやめて年功制に戻るのか、と思った人も多かっただろう。実際はそうではなかった。短期の結果業績を中心とした成果主義から、富士通が考えている本来の成果主義に変えていく話であった。成果についての再定義をしたのだ。短期結果業績だけではなく、中長期成果を含めて「成果」とみなすようにした。さらに結果業績を出していく「プロセス活動」も評価の対象に含めた。
 能力があっても、気持ちが前に向いていなければ結果に反映しない。気持ちが前に向いていても、環境が悪ければ結果に反映しない。運・不運もある。

 つまり単純な結果だけを見るのであれば、それは成果主義ではなく「結果主義」となってしまう。そこから脱するためには、各自がどのような行動を、どれだけとったのかを見て、評価していく必要があるだろう。(以下創刊号にて掲載。)


成果主義の導入を成功させるポイントとは?
どのように評価していくのか?
期待役割とは?
具体的なやり方としては?
期待役割をどう作っていくのか?
新しい制度を成功させるポイントは?

 

略歴 ながお・とよひこ
 1954年生まれ、大手流通企業の事業本部人事課長、本社労務課長、事業本部人事総務部長など人事労務関係の実務を17年間担当。94年三和総合研究所入社、以来100社以上の組織・人事コンサルティングを手がけている。2000年、組織人事戦略部設立と同時に部長就任(コンサルティング兼務)。



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