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第6章 決算書の分析 第2節 分析の指標~成長性、生産性~

1.成長性と生産性の位置づけ

次に成長性と生産性の指標について、説明します。先ほどの安全性と収益性の指標はとても有名なのに対して、成長性と生産性は応用的な指標といえます。

2.伸びている会社を見極める!

成長性の分析は、会社がどの程度伸びているのか、つまり会社の成長の度合いを知ることができます。成長性の分析の具体的な指標として、売上高伸び率、売上高研究開発費比率があります。ここでは、売上高伸び率を紹介しておきます。

売上高伸び率とは、当期の売上高から前期の売上高を控除して、それを前期の売上高で除した値のことであり、売上高伸び率によって、売上高が前期からどの程度伸びているかを知ることができます。売上高伸び率を式で示すと、以下のようになります。

図1

売上高伸び率は、もちろん毎期上昇することが望ましいですが、やはりこの指標も自社の1期分だけの分析で終わってしまうと、何となくの感想しか得られなくなってしまうので、少なくとも5期分くらいの伸び率を比較するであるとか、同業他社の売上高伸び率と比較することによって、自社の伸び率の良し悪しを判断することができます。

また売上高伸び率によって成長の全体像をつかんだら、その後、理由を分析することも大切です。どの製品がたくさん売れたのか、どの得意先への販売が増えたのか、あるいは業界全体が伸びているか、自社だけが伸びているのか、などを知ることによって、会社の状況をよく知ることができるようになります。

3.給料を超える分の働きをしているかがわかる!

生産性の分析によって、その会社の従業員がどの程度稼いでいるのかを知ることができます。生産性の分析の具体例として、労働生産性、労働装備率、労働分配率、などがあります。ここでは労働生産性について、紹介しておきます。

労働生産性とは、会社の付加価値を従業員数で除した値のことであり、労働生産性によって、従業員1人あたりがどの程度稼いでいるかを知ることができます。労働生産性を式であらわすと以下のようになります。

図2

付加価値は、売上総利益のことと思ってもらえれば良いです。付加価値を従業員数で除すことによって、従業員1人あたりがどのくらい粗利を稼いでいるかを知ることができるわけです。

自分の給料よりもが自分の会社の労働生産性が高ければ、自分は給料を超える働きをしていると、胸を張れることができるわけです。

一般に労働生産性は、大企業で2,000万円くらい、中小企業で1,000万円を超えることが望ましいといわれています。

代表的な指標を紹介してきましたが、他にももっと経営分析の指標は存在しますし、複雑な計算を必要とするものもあります。これらの指標を使いこなすことができるようになれば、会社経営や株式投資などに大いに役立ちます。必要に応じて、さらに勉強を進めていければ良いかと思います。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。