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第4章 決算書の書き方 第3節 複式簿記

1.決算書を作成するには複式簿記が必要!

個人事業主(青色申告の場合)であっても株式会社であっても、決算書を作成するためには複式簿記が必要になります。複式簿記とは、一つの項目(例えば現金)の増減のみをとらえるのではなく、複数の項目の増減をとらえていきます。

つまり、現金の増減だけをとらえるのではなく、商品や売上や給料などの増減もとらえていくのです。そうすることによって、貸借対照表、損益計算書を作成することができるのです。

2.複式簿記の流れ

複式簿記では、まず取引が発生したら仕訳を行います。取引とは、資産、負債、資本(純資産)、収益、費用の増減に影響を与える事象のことなのですが、具体的には、「商品を100,000円で販売し、代金は現金で受け取った」とか「給料50,000円を現金で支払った」などです。

仕訳とは、個々の取引を横一行であらわすことです。例えば、上述した「商品を100,000円で販売し、代金は現金で受け取った」という取引を仕訳すると、以下のようになります。

現  金 100,000 売  上 100,000

仕訳のやり方は、やはり簿記という学問を学ばなければ理解できませんので、決算書の作成にも興味のある方は、簿記の勉強もされると良いと思います。とりあえず、ここでは、仕訳とはこういうものというくらいで結構です。

仕訳を行ったら、今度はこれを勘定と呼ばれる表に書き移します。上述の仕訳を勘定に書き移すと、以下のようになります。

図1

ここまでが、会社の経理の方が日常的に行う作業です。

決算になったら、勘定に集められた金額を集計して、試算表と呼ばれる表を作成します。ここには、資産、負債、資本、収益、費用の1年間の金額が項目ごとに集計されています。

そして、決算整理という手続きを経て、最終的に試算表から資産と負債と資本を抜き出して貸借対照表が作成され、費用と収益を抜き出して損益計算書が作成されます。

このような流れを経て、決算書は作成されるのです。

3.実務上は会計ソフトを用いて決算書を作ります!

株式会社などは、1年の中で何百、何千、何万という取引が生じますが、これを会社の経理の方がすべて仕訳し、決算書の元になるデータを積み上げていきます。それが最終的に決算書という形に表わされます。

今の時代は、ほとんどの会社が会計ソフトを用いて経理処理を行っているので、通常は、会社の経理の方が仕訳を入力すると、あとは会計ソフトが自動的に勘定に転記し、それを試算表に集め、最終的に貸借対照表、損益計算書まで、自動的に作成してくれます。

ただし会計ソフトを使用していても、複式簿記の知識がないと仕訳が入力できませんし、それぞれの帳簿や表の意味もわからなくなってしまうので、経理で働く方をはじめ決算書の作成に携わる方は、最低限の複式簿記の知識は必要になります。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。