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取締役会議事録の書き方と文例

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取締役会議事録は、会社法によって作成することを義務付けられており、記載内容についても決められた項目を記録する必要があります。ここでは弁護士が取締役会議事録の書き方について解説します。

また文末に3つのサンプル「1 取締役会議事録の記載例(代表取締役の選定)」「2 WEB会議を用いた取締役会議事録の記載例(譲渡制限株式の譲渡の承認)」「3 書面決議による取締役会議事録の記載例(重要な財産の処分)」も掲載しています。

1. 取締役会議事録とは

取締役会議事録とは、取締役会における議事の内容を記録した議事録です。

取締役会議事録は、取締役会を開催した場合には、必ず作成しなければならないとされています(会社法369条3項)。

2. 誰が取締役会議事録を作成するのか

取締役会議事録を誰が作成するかについては、会社法上特段の定めはありません。実務上は、定款等の定めにより、議長である代表取締役が作成者とされていることが多いです。

もっとも、取締役会に出席した取締役及び監査役は、取締役会議事録が書面によって作成されている場合には、これに署名又は記名押印をしなければならず(会社法369条3項)、電磁的記録をもって作成されているときは、署名又は記名押印に代わる措置(電子署名等)をとらなければならないとされています(同条4項)。

そして、取締役会に出席した取締役であって、取締役議事録に異議をとどめないものは、決議に賛成したと推定されるため(同条5項)、取締役会議事録作成者でなくても、きちんと取締役会議事録の内容を確認し、当該議事録の内容が認識と異なっている場合には、訂正要求等を行う必要があります。

3. いつまでに取締役会議事録を作成しなければならないか

取締役会議事録の作成期限については、会社法上特段の定めはありません。

ただ、登記事項に係る取締役会決議を行った場合には、2週間以内に取締役会議事録を添付して登記申請しなければならない等、他の法令によって期限が定められているケースがあります。

そのため、遅くとも、取締役会閉会後2週間以内には取締役会議事録を作成しておくよう心掛けるべきです。

4. 取締役会議事録はどのように作成するか

取締役会議事録は書面又は電磁的記録をもって作成しなければなりません(会社法施行規則101条2項)。

また、作成された取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備え置かなければならないとされております(会社法371条1項)。なお、書面については、スキャナー等で読み取った電磁的記録を保存する方法も認められています(会社法施行規則232条13号、233条、電子文書法3条1項)。

5. 取締役会議事録には何を記載しなければならないのか

取締役会議事録に記載しなければならない基本的な内容は、会社法施行規則101条に定められています。具体的には、以下のとおりです。

①取締役会が開催された日時、場所
②特別取締役による取締役会である場合はその旨
③会社法の特別の規定により招集された場合はその旨
④取締役会の議事の経過の要領及びその結果
⑤決議事項について特別の利害関係を有する取締役があるときはその氏名
⑥会社法の規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の概要
⑦取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
⑧取締役会の議長が存するときは議長の氏名

6. 決議、報告の省略

(1) 決議の省略(書面決議)

取締役が取締役会の目的である事項について提案をした場合において、当該事項について議決に加わることができる取締役の全員が当該提案につき書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは(監査役が異議を述べたときを除く。)、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款に定めることができます(会社法370条)。

この定款の定めに基づいて、取締役会決議の省略(書面決議)を行う場合でも、取締役会議事録の作成は必要であり、以下の事項を記載する必要があります(会社法施行規則101条4項1号)。

①取締役会決議があったものとみなされた事項の内容
②決議があったものとみなされた事項を提案した取締役の氏名
③取締役決議があったものとみなされた日
④議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

(2) 報告の省略の場合

取締役会での報告についても、取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して、取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しないとされています(会社法372条1項)。

報告の省略の場合であっても、取締役会議事録の作成は必要であり、以下の事項を記載する必要があります(会社法施行規則101条4項2号)。

①取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
②取締役会への報告を要しないものとされた日
③議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

ただ、3カ月に1回以上、取締役が自己の職務の執行の状況を報告することについては、取締役会への報告を省略できないため、注意してください(会社法372条2項、3項)。

7. 取締役会議事録の閲覧謄写ができるのか

株主や債権者、親会社社員について、一定の要件のもと、閲覧謄写の請求が認められます(会社法371条2項乃至5項等)。

8. 罰則はあるのか

取締役会議事録に記載すべき事項を記載、記録せず、又は虚偽の記載、記録をしたとき(会社法976条7号)、取締役会議事録を備え置かなかったとき(同条8号)、正当な理由がないのに取締役会議事録の閲覧謄写を拒んだとき(同条4号)は、取締役等は、100万円以下の過料に処せられるため、慎重な対応が必要です。

9. サンプル

上記5、6の基本的な記載事項の他、具体的な事案に応じて取締役会議事録に記載すべき事項があります。

以下では、代表取締役を選定する場合、WEB会議システムを用いた取締役会、書面決議の場合において、譲渡制限株式の譲渡承認を行う場合について、サンプルを挙げます。

1 取締役会議事録の記載例(代表取締役の選定)

第●回 取締役会議事録

1 開催日時 ●年●月●日 ●時●分~●時●分

2 開催場所 本社 大会議室

3 出席者  取締役総数 ●名  出席取締役 ●名
        監査役総数 ●名  出席監査役 ●名

 上記のとおり出席があったので、定刻、取締役●●は選ばれて議長となり、議長席に着き、開会を宣し審議に入った。

(決議事項)
第1号議案 代表取締役選定の件
 議長から、本日開催の第●回定時株主総会において取締役全員が改選され、取締役全員が承諾したので、定款●条に基づき、代表取締役を選定したい旨を述べ、その選定を諮ったところ、全員一致をもって代表取締役●●が選定され、被選定者は就任を承諾した。

第2号議案 ・・・

 以上をもって議事の全てを終了したので議長は●時●分閉会を宣した。

 以上、議事の経過及び結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役及び出席監査役は次に記名押印する。

  ●年●月●日
  株式会社●● 取締役会

議長 取締役  ●● ㊞
取締役  ●● ㊞
取締役  ●● ㊞
監査役  ●● ㊞

株主総会において取締役を改選後、議場で議長を選定し、代表取締役を選定のうえ、席上で就任承諾する場合のサンプルです。

代表取締役就任による変更の登記申請書には、取締役会議事録を添付しなければならず(商業登記法46条2項)、前任の代表取締役が登記所に提出している印鑑を押印している場合を除き、出席取締役、出席監査役が実印を押印しかつ印鑑証明書を添付することが必要となります(商業登記規則61条6項3号)。

2 WEB会議を用いた取締役会議事録の記載例(譲渡制限株式の譲渡の承認)

第●回 取締役会議事録

1 開催日時 ●年●月●日 ●時●分~●時●分

2 開催場所 本社 大会議室

3 出席者  取締役総数 ●名  出席取締役 ●名
        監査役総数 ●名   出席監査役 ●名

なお、取締役●●は●支店会議室からテレビ会議によって出席。

 上記のとおり出席があったので、定刻、定款の規定により代表取締役●●が議長となり、本取締役会はWEB会議システムを用いて開催する旨を宣した。当該WEB会議システムにより、出席者の音声と画像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとなっていることが確認されて、審議に入った。

(決議事項)
第1号議案 株式の譲渡承認請求の件
 議長から、当会社の株主から次のとおり、当会社の譲渡制限株式の取得について承認請求がなされている旨を説明し、承認すべきか否か審議した結果、全員一致をもってこれを承諾した。

  譲渡人(承認請求株主) 東京都●区●丁目●番●号
                     ●● ●●

  譲渡の相手方      東京都●区●丁目●番●号
                     ●● ●●

  譲渡制限株式の数    普通株式●●株

第2号・・・・

(報告事項) 報告事項・・・・

 以上をもってWEB会議システムを用いた本取締役会は、議事の全てを終了したので議長は●時●分閉会を宣した。

 以上、議事の経過及び結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役及び出席監査役は次に記名押印する。

(略)

いわゆるコロナウィルスの影響等により、実際に出席者が一堂に会することができない場合も想定されますが、そのような場合、出席者は、WEB会議システム等を通じて取締役会に出席することができます。

その場合、出席者の音声又は画像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確に意見表明を行うことが互いにできるような仕組みが必要となり、その出席方法については、議事録に記載すべきこととなります(会社法施行規則101条3項1号)。

3 書面決議による取締役会議事録の記載例(重要な財産の処分)

取締役会議事録

取締役会の決議があったものとみなされた日  ●年●月●日
決議の目的である事項の提案者 代表取締役 ●●

(決議の目的である事項)
第●号議案 ●●売却の件
 当社は、株式会社●との間で、別紙●●売買契約のとおり売買契約を締結する。

●年●月●日、代表取締役●●が取締役及び監査役の全員に対して上記取締役会の決議の目的である事項について提案し、当該各提案につき、●年●月●日、議決に加わることができる取締役の全員から書面による同意の意思表示を得、かつ、監査役からの異議もなされなかったため、会社法第370条及び当社定款第●条第●項に基づき、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなされた。

 以上のとおり、取締役会の決議の省略を行ったので、取締役会の決議があったものとみなされた事項を明確にするため、会社法第370条及び会社法施行規則第101条第4項第1号に基づき、本議事録を作成する。

  ●年●月●日
  株式会社●● 取締役会

議事録作成者 代表取締役  ●● ㊞

財産の売却が「重要な財産の処分」(会社法362条4項1号)に該当する場合には、取締役会決議が必要となります。本サンプルは、その場合に書面決議を行った場合を想定したものとなります。

執筆者プロフィール

阿田川 敦史(あだがわ あつし)
弁護士

シグマ麹町法律事務所パートナー弁護士/2010年3月慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2012年3月慶應義塾大学法科大学院修了。2012年9月司法試験合格(66期)。渉外・企業法務弁護士事務所での勤務を経て、2020年12月、シグマ麹町法律事務所に参画。
IT業界や製造業界等のクライアントを中心に、企業法務全般、M&A、競争法、訴訟等を取り扱っている。また、クライアントの依頼によっては、カルタヘナ法等の特殊な分野から、一般民事事件や刑事事件等も取り扱う等、企業法務を中心に、幅広い分野で活躍中。

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