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異動や転職は一期一会の機会

社内のジョブローテーション制度で、管理部門しか経験したことの無い私に、突然営業部異動の辞令が交付された。
 人事マンとしては、仕事にいささかのプライドがあったが、営業部隊が全くの初めてであった私は、正直言って、転職するより戸惑いを覚えた。
 しかしもっと困惑したのは、受け入れ先の営業部の方であったに違いない。稼ぎ頭の課長が転出し、まったくの素人が配属されてきたのだから。辞令が発令された日の、上司になる人の苦渋に満ちた顔は今でも忘れられない。そんな私を不承不承受け入れながらも、営業の仕事を一から教えてくれたのが、この人であった。
 半年、1年と一緒に仕事をするなかで、だんだんお互いの信頼関係が構築されていった。仕事にも慣れてきた私が、技術的に難しい製品作りに挑み、結果として1500万円近い不良製品を作り出した。そのとき、蒼白になって報告をした私に、「まあ、命まで取られるわけやないし」と、叱りもしなかったことが印象に残っている(もっとも後処理は大変だった…)。営業部での経験は社内で新たな人脈を作り、会社を見直す良い機会になった。
 営業部経験を経て、管理部門に戻った私の後を追いかけて、なぜか彼が異動で再度私の上司になった。今度は私が仕事を教える番であったが、基本的信頼関係が出来上がっているため、上司部下の関係は良好であった。
 サラリーマンの世界でも、一期一会の出会いが、どう人生を左右するか分からない。逆にそこが面白い。現在の仕事や職場環境に漫然と居続けることは機会の喪失であり、異動や転職は、自分の別の可能性を探求する絶好のチャンスだ。
 ちなみにその上司は、私が退職する際に、最も残念がってくれたうちのひとりであり、結局私が結婚する際の仲人である。だからいまでもお付き合いがある。

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